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凍結胚は長く保存すると妊娠率が下がる?― 凍結保存期間と移植成績について ―

「数年前に凍結した胚だけど、古くなっていないかな?」凍結胚移植を予定している方から、このような質問を受けることがあります。結論からいうと、現在行われているのガラス化凍結(vitrification)では、数年間の保存で大きく妊娠率が低下する可能性は低いと考えられています。一方で、5年以上の長期保存では若干の低下を示唆する研究もあり、完全に結論が一致しているわけではありません。

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凍結胚は「古くなる」の?

まず知っておきたいのは、凍結保存中に胚が年齢を重ねるわけではないということです。胚はマイナス196℃の液体窒素内で保存され、代謝がほぼ停止した状態になります。イメージとしては「時間が止まった状態」に近く、理論上は劣化しにくい環境です。

数年間の保存では大きな影響なしという研究が多い

2024年に『Fertility and Sterility』誌に掲載された大規模研究では、58,001個の凍結胚盤胞を解析し、長期間保存しても生児獲得率(赤ちゃんが生まれる率)に大きな悪影響は認められませんでした。また、2023年の研究でも最大約7年間の保存で妊娠率や出生児への影響に差がなかったと報告されています。これらの研究からは、現在のガラス化凍結では、数年保存したからといって大きく成績が落ちる可能性は低いと考えられています。

一方で「長期保存で低下する可能性」を示す研究も

一方で、すべての研究が同じ結果ではありません。2021年の研究では、5年以上保存された胚で妊娠率や生児率がやや低下する可能性が報告されています。また、一部の研究では保存期間が長いほど妊娠率や出産率が低下するとする報告もあります。ただしここで注意が必要です。凍結した年代によって培養技術が異なることや、長期保存となった背景(出産後の保存、治療中断、病気治療など)、患者さんの年齢や胚の質など、保存期間以外の要因が結果に影響している可能性があります。そのため、「長く凍結したから妊娠率が下がった」と断定できるわけではありません。

出生児への安全性は?

長期間保存された胚であっても、出生体重や先天異常率などの周産期成績に大きな差は認められていないという報告が多く、現時点では「長く保存した胚だから赤ちゃんへの影響が強く心配される」というデータは乏しいと考えられています。

まとめ

現時点のエビデンスをまとめると、数か月〜数年程度の保存では妊娠率が低下する可能性は低く、5年以上では低下を示唆する研究もあるものの結論は一致していません。また、出生児への安全性についても大きな問題は報告されていません。そのため、「数年前に凍結した胚だから妊娠しにくいかもしれない」心配する必要はないと思います。ただし母体年齢が上がると妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の合併など妊娠中のトラブルが増えることも事実です。凍結胚は歳を取りませんが、育児が落ち着き生活的にも次の妊娠をトライできるようになった場合には、ある程度早めに次の胚移植を検討してもよいと思います。

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