〜クラミジア抗体が教えてくれる「見えない卵管のダメージ」〜
「子宮卵管造影で卵管は通っていました。
だから卵管に問題はないと言われました。」
不妊治療の外来でよく聞く言葉です。
確かに、卵管造影(HSG)は卵管が詰まっていないかを調べるとても大切な検査です。
しかし、卵管が通っていても、妊娠しにくくなるケースがあります
そのヒントになるのが、クラミジア抗体検査です。
クラミジア感染と卵管の関係
クラミジアは、若い世代に多い性感染症のひとつです。
問題なのは、
感染しても症状がほとんどないことが多い
という点です。
知らないうちに感染し、自然に治ってしまっている人も多くいます。
しかしその間に、
- 卵管の内側(繊毛)
- 卵管周囲の腹膜
に微細な炎症や傷が残ることがあります。
これが将来の妊娠に影響することがあるのです。
クラミジア抗体とは?
クラミジア抗体(IgG)は、
「過去にクラミジアに感染したことがあるか」
を調べる血液検査です。
現在感染しているかどうかではなく、
卵管にダメージを受けた可能性があるかの目安になります。
卵管が通っていても妊娠率が下がる?
この疑問に正面から答えた研究があります。
Coppus SFPJ, et al. Human Reproduction 2011
この研究では、
- 卵管造影や腹腔鏡で
「卵管は通っていて明らかな異常がない」 - 排卵もある不妊女性
を対象に、
クラミジア抗体陽性 vs 陰性で
自然妊娠率を比較しました。
その結果:
クラミジア抗体陽性の女性は、
自然妊娠する確率が約3分の2に低下していました。
(調整後の妊娠率比 0.66)
つまり、卵管が通っていても、クラミジア抗体が陽性だと妊娠しにくいといえます。
なぜHSGでは分からないのか?
卵管造影で分かるのは、卵管が通っているかどうかです。
しかし妊娠に必要なのは、
- 卵子を拾う
- 受精卵を運ぶ
- 正しい方向に動かす
という卵管の“機能”です。
クラミジア感染後は、
- 卵管の中の繊毛が傷つく
- 卵管の動きが悪くなる
- 卵管の周囲に軽い癒着が起きる
といった「見えない異常」が残ることがあります。
これらは、
HSGでは正常に見えても、妊娠しにくくなる原因になります。
クラミジア抗体が陽性だったらどうする?
クラミジア抗体が陽性だからといって、
必ず妊娠できないわけではありません。
ただし、
- タイミングや人工授精を続けても妊娠しない
- 原因不明不妊と言われている
場合には、
卵管の“見えない機能低下”が影響している可能性
を考える必要があります。
このような場合、体外受精が必要になります。
まとめ
- 卵管造影で通っていても、卵管が「完全に正常」とは限らない
- クラミジア抗体は、過去の感染による卵管ダメージの目印
- 抗体陽性の人は、自然妊娠率が低い可能性がある
- 「原因不明不妊」の背景に、卵管の見えない障害が隠れていることがある
体外受精へのステップアップはクラミジアのみで決めることはありません。
年齢やそのほかの因子も加味したうえで総合的に判断します。
質問があればいつでもお伝えください。