はじめに
体外受精を行う中で
「初期胚で戻すのがいいのか、それとも胚盤胞まで育てた方がいいのか」
迷うことが多くあります。
どちらが正解というよりも、状況によって使い分けることが大切です。
胚の成長と移植のタイミング
受精卵は体外で培養すると
- 受精後2〜3日 → 初期分割胚(初期胚)
- 受精後5〜6日 → 胚盤胞
という段階まで成長します。
胚盤胞より先は子宮に着床するので胚盤胞は我々が卵を育てることのできる最終段階です。
どこまで我々の手で育てるかが今回のテーマです。
なぜ胚盤胞移植が多く選ばれるのか
現在の保険診療では回数に制限があるため、
1回あたりの妊娠率を高めることが重要になります。
胚盤胞まで育った胚は
- 発育する力がある程度確認されている
- 子宮に戻すタイミングが自然に近い
といった理由から、
一般的には胚盤胞移植が選ばれることが多いです。
ただし、すべての方に胚盤胞が最適とは限りません
- 回収できる卵子が少ない場合
- これまで胚盤胞まで育たなかった場合
このようなケースでは、
胚盤胞にこだわることで「移植できない」可能性が出てきます。
初期胚移植という選択肢
そのような場合には、
初期分割胚の段階で子宮に戻すという選択があります。
子宮の中は、本来胚が育つ自然な環境です。
できるだけ早い段階で子宮に戻すことで、発育が進む可能性があると考えられています。
初期胚移植の注意点
一方でデメリットもあります。
移植後の発育を直接確認できないことです。
培養室であれば
「胚盤胞まで育ったかどうか」を評価できますが、
初期胚で移植した場合はその後の発育を直接見ることはできません。
子宮外妊娠のリスクについて
移植のタイミングによって、子宮外妊娠のリスクに違いがあるかも気になるポイントです。
これまでの研究では、
胚盤胞移植の方が初期胚移植に比べて子宮外妊娠がやや少ない傾向が報告されています。
これは、
胚盤胞が本来子宮に到達するタイミングに近く、着床の位置が安定しやすいことが理由と考えられています。
ただし差は大きくはなく、いずれも頻度は1%前後と低い合併症です。
この点だけで移植方法を決めることは一般的ではありません。
まとめ
初期胚と胚盤胞、それぞれに特徴があります。
- 胚盤胞移植
1回あたりの妊娠率が高い傾向
子宮外妊娠がやや少ない可能性 - 初期胚移植
移植できるチャンスを確保しやすい
当院では基本的には胚盤胞までの培養を推奨していますが、
なかなか胚盤胞までならない場合は初期胚での移植を検討しています。