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胚移植後の運動と安静について

― どこまで動いていいの?何を控えるべき? ―

胚移植を受けたあと、
「安静にしていた方がいいのでは?」
「運動しても大丈夫?」
「重いものをもってもよい?」
と不安になる方はとても多いと思います。

インターネット上にはさまざまな情報がありますが、
ここでは胚移植後の過ごし方を整理してみます。


目次

移植後の「安静」は本当に必要?

結論から言うと、
胚移植後にベッドで安静にする必要はありません。

これまでに複数の研究が行われていますが、

  • 移植後に長時間安静にしても
  • すぐに通常生活に戻っても

妊娠率に差はないことが示されています。

現在では、海外のガイドライン(アメリカ生殖医学会など)でも
「胚移植後のベッド上安静は推奨しない」と明記されています。

つまり、
「動いたから胚が落ちる」「安静にしないと着床しない」
といった心配は無用です。


移植後の「運動・活動量」は下げる必要がある?

では、どれくらい動いてよいのでしょうか。

近年では、スマートウォッチや加速度計を用いて
移植後の活動量(歩数・身体活動量)を客観的に評価した研究も報告されています。

これらの研究では、

  • 移植後にどれくらい歩いていたか
  • どれくらい座っていたか
  • 日常の活動量が多いか少ないか

といった指標と妊娠率を比較していますが、
活動量が多いから妊娠率が下がる、という結果は示されていません。

つまり、

移植後だからといって、
日常生活レベルの活動量を意識的に下げる必要はない

と考えられます。

通勤、買い物、家事、軽い散歩など、
普段通りの生活は基本的に問題ありません。


ただし「過度な運動」は控えめに

一方で注意が必要なのは、激しい運動です。

移植後の研究の多くでは、

  • ランニング
  • HIIT(高強度インターバルトレーニング)
  • 激しい筋トレ

といった高強度運動をしている人がほとんど含まれていません。

つまり、

  • 「激しい運動をしても安全」と証明されているわけではなく
  • 単に「データが少なくて評価できない」というのが現状です

そのため実臨床では、

移植後は
日常生活は普通にOK
ただし息が上がるような激しい運動は念のため控えめに

としておくのがよいと思います。


重いものを持ってもいい?

患者さんからよく聞かれる質問のひとつが、

重い荷物を持っても大丈夫ですか?

というものです。

これについては、
「胚移植後に重いものを持った人」と「持たなかった人」で
妊娠率を比較した直接的な研究はほとんどありません。

つまり、明確な答えは存在しません。


妊娠初期と「重いもの」の研究から考える

一方で参考になるのが、
妊娠初期の女性を対象とした疫学研究です。

デンマークの大規模コホート研究では、

  • 20kgを超える重いものを
  • 1日に何度も繰り返し持ち上げる女性は

早産のリスクが高くなることが報告されています。

これは胚移植後ではなく、妊娠成立後の研究ですが、

妊娠初期における
過度な重量物の反復持ち上げは
身体に一定の負担をかける可能性がある

と考えられます。

そのため、胚移植後の生活としては、

20kgを超えるような重いものは、
念のため持たない方が無難
だと思います。


大切なのは「無理をしすぎないこと」

胚移植後は、
「何もしないでじっとしている」必要はありません。

一方で、

  • 無理な運動
  • 重たい荷物を何度も持つ
  • 疲労が強く出る生活

こうした状況は、妊娠のためというより
ご自身の体調管理の観点からも避けた方がよいでしょう。

基本は、

普段通りに生活してOK
ただし“無理するほどのこと”はしない

このくらいのバランスが最も良いと考えます。
移植してから妊娠判定まではどうしてもいろいろと気になってしましますが、あまり意識しすぎずにいつも通り過ごしていただければと思います。

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