体外受精の胚移植はこれまでの治療の集大成となる大切なステップです。
胚移植の成績は胚の質によるところが大きいですが、子宮内膜の状態、炎症、ホルモン環境、免疫バランスにも大きく左右されます。
患者さんご自身でもできる移植前の大切なことをまとめました。
① 葉酸+マルチビタミンを毎日
葉酸は赤ちゃんの先天異常を予防する栄養素として知られていますが、
実は受精卵の染色体安定性や初期胚の発育にも重要です。
JAMAに掲載された大規模研究では、
マルチビタミンを摂取していた女性の方が
体外受精での生児出生率が有意に高いことが示されています。
胚移植を控えている方には、
葉酸400〜800µgを含むマルチビタミンの摂取が推奨されます。
② ビタミンDを不足させない
ビタミンDは骨だけでなく、
子宮内膜の免疫環境や着床に関わる遺伝子の調節にも関与しています。
複数のメタ解析で、
血中ビタミンDが十分な女性の方が
体外受精での妊娠率・生児出生率が高いことが示されています。
日本人女性は欠乏している方が多く、
必要に応じてサプリメントでの補充が有用です。
③ 魚(オメガ3脂肪酸)を意識してとる
DHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸は、
子宮内膜の炎症を抑える働きがあります。
魚の摂取量が多い女性では、
胚盤胞到達率や妊娠率が高いことが報告されています。
週2〜3回の青魚、または魚油サプリの利用が目安です。
④ 地中海食を意識する
地中海食とは、
- 魚
- 野菜・果物
- ナッツ
- オリーブオイル
- 全粒穀物
を中心とした食事で加工食品を控える食事パターンです。
この食事をしている女性は、
体外受精の妊娠率が約40%高かったというオランダの研究もあります。
加工食品や糖質の多い食事から、
抗炎症型の食事に切り替えることがポイントです。
⑤ 軽い運動を続ける
ウォーキングやヨガなどの軽〜中等度の運動は、妊娠しやすい体づくりにつながります。
週3〜5回の軽い運動は妊娠率を高めますが、
激しいトレーニングは逆効果になるため注意が必要です。
⑥ お酒はできるだけゼロに
体外受精を受ける女性を対象とした大規模研究では、
週4杯以上の飲酒で生児出生率が有意に低下していました。
これは具体的には、
- ビール350ml × 4本
- ワイングラス4杯
- 日本酒 約2合弱
に相当します。
「少量だから大丈夫」と思われがちですが、
胚移植前後はできるだけ飲まないことが最も安全です。
⑦ カフェインは控えめに
カフェインの多い摂取は、
移植後の流産リスクが高くなる可能性があります。
目安は
コーヒー2杯(約200mg)以下/日です。
⑧ 抗酸化サプリ(レスベラトロールなど)に注意
抗酸化サプリは卵子の質改善によく使用されますが、
胚移植前〜着床期には逆効果になる可能性があります。
着床には、ある程度の
- 活性酸素
- 炎症反応
- 免疫シグナル
が必要で、
レスベラトロールなどの強い抗酸化剤は
これらを抑えてしまうことが示唆されています。
レスベラトロール以外にも追加で内服している抗酸化剤は移植周期に入ったら中止を推奨します。
⑨ 睡眠をしっかりとる
睡眠時間が7〜8時間の女性は、
6時間未満の女性に比べて
体外受精の妊娠率が高いことが報告されています。
睡眠不足や夜更かしは、
- メラトニン低下
- ストレスホルモン上昇
- 慢性炎症
を通じて、内膜や着床に悪影響を与えます。
胚移植前は
- 23時までに就寝
- 7〜8時間の睡眠
- 寝る前のスマホを控える
ことに注意しましょう。
まとめ
胚移植の成功は、
「良い胚」+「受け入れる体の準備」で決まります。
内膜の状態やホルモンの値に関しては病院で十分に確認します。
生活習慣と栄養を整えることは、
子宮と免疫を“妊娠しやすい状態”に整える医学的介入でもあります。
できる範囲内で構いませんので是非取り入れてください。