― 子宮内フローラ検査・EMMA/ALICE検査について ―
体外受精や胚移植を行っても妊娠に至らない場合、その原因は胚だけでなく子宮内の環境にある可能性があります。その評価方法のひとつとして、近年注目されているのが子宮内細菌叢検査です。
現在、日本では
子宮内フローラ検査
EMMA/ALICE検査
といった検査が行われており、いずれも先進医療として実施されている検査です。
子宮内にも「細菌のバランス」があります
以前は子宮の中は”無菌”と考えられていましたが、実は子宮内にも細菌の集まり(細菌叢:フローラ)が存在します。
子宮内では、乳酸菌(ラクトバチルス)が優位な状態が、妊娠にとって望ましいと考えられています。
ただし、「乳酸菌がある=良い環境」というわけではなく、どの種類の乳酸菌が多いかが重要です。
妊娠に良いとされる4種類の乳酸菌
現在、子宮内・腟内環境や妊娠との関連で、比較的良好とされている乳酸菌には、主に以下の4種類があります。
- クリスパタス菌(Lactobacillus crispatus)
- ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)
- ラムノサス菌(Lactobacillus rhamnosus)
- ジェンセニー菌(Lactobacillus jensenii)
これらの乳酸菌は、乳酸をしっかり産生し、子宮内を弱酸性に保つことで、炎症や有害菌の増殖を抑える働きがあると考えられています。特にクリスパタス菌は、安定した良好なフローラと関連する代表的な乳酸菌として知られています。
注意が必要な乳酸菌:イナーズ菌
一方で、イナーズ菌(Lactobacillus iners)も乳酸菌の一種ですが、子宮内フローラの乱れや慢性的な炎症と一緒に検出されることが多い菌です。
研究では、イナーズ菌が優位な場合、妊娠率が低下することや、流産率が高くなる傾向が報告されています。そのため、子宮内では「乳酸菌が存在するか」ではなく、良い乳酸菌がどれだけ保たれているかが重要と考えられています。
子宮内フローラ検査・EMMA/ALICE検査でわかること
これらの検査では、子宮内から少量の検体を採取し、細菌の種類やバランスを遺伝子解析によって評価します。
- EMMA検査
乳酸菌の量や種類(良い乳酸菌が保たれているか)を評価 - ALICE検査
慢性子宮内膜炎に関連する細菌の有無を評価
子宮内フローラ検査も同様に、子宮内細菌叢全体の状態を調べる検査です。
検査の方法について
細いカテーテルを用いて子宮内から少量の組織を採取し、外来で短時間に終了します。多少の痛みはありますが子宮内膜組織検査と同程度です。結果が出るまでには約3週間かかります。
どのような場合に行う検査か
- 胚移植を行っても妊娠に至らない場合
- 子宮鏡検査で子宮内膜の炎症が疑われる場合
に検討されます。
近年、不妊治療は保険適用となり、保険での胚移植には回数の上限があります。そのため、限られた移植回数をより有効に使う目的で、移植を重ねる前に子宮内環境を評価するため、早めに検査を行うという考え方もあります。
検査後の治療について
検査結果に応じて、以下の治療を組み合わせて行います。
- 抗菌薬治療:慢性子宮内膜炎に関連する細菌が検出された場合
- 乳酸菌の腟内挿入:良い乳酸菌を補い、子宮内環境の改善を目指します
- ラクトフェリンの内服:抗菌・抗炎症作用により、乳酸菌が定着しやすい環境づくりをサポートします
これらは、検査結果をもとに必要と判断された場合に行われます。
まとめ
子宮内細菌叢検査は、妊娠に良いとされる4種類の乳酸菌(クリスパタス・ガセリ・ラムノサス・ジェンセニー)を意識しながら、検査結果に基づいた治療を行うことで、より良い子宮内環境を目指します。
気になる方は、これまでの治療経過も含めて、主治医とご相談ください。