「妊娠率はどれくらいですか?」
最もよくいただくこの質問には、いくつかの誤解が生まれがちです。
1つは、分母と分子が施設によって異なるということです。
そしてもう一つあるのは、
必ずしも高ければよいということではない
ということです。
妊娠率が高ければよい、ではないというのは?
前提として、妊娠率が高いこと、それ自体はとても良いことだと思います。
しかし、いくつかの点で整理しておかないといけません。
①施設について知ること
少し話がそれますが、不妊治療を行っている施設についてまずは知る必要があります。
日本は不妊治療のクリニックが世界で最も多く600施設程あります。
しかし、日本産科婦人科学会からの報告を見ても分かるのですが、
日本全体の治療件数の70%を行っているのは、上位15%程のクリニックが占めています。
つまり、いくら妊娠率が高かろうとも、その治療件数が少なければ、妊娠率は極端に高くでてしまったり、
低くでてしまったりするわけです。
また、同じ技術者であったとしても、当然多くの件数を実施していれば、その分だけ腕を磨く機会があるわけです。
件数がすべてではありませんが、クォリティを高めるためには一定の件数が必要といえるのではないでしょうか。
②患者背景が異なる
すべてのクリニックに同じ背景の患者さまがいくわけでもないですし、例えば治療方針や費用形態も異なります。
そうした背景の違う患者さまの妊娠率を同じように表現しているため誤解を生んでしまうのです。
妊娠率に影響を及ぼす要因はいくつかあります。
妊娠率に影響を及ぼす要因について
①年齢
例えば、35歳以下を中心に治療を実施している施設と40歳以上ばかりを行っている施設では、
妊娠率が異なります。
その妊娠率の算出対象となっている人の年齢を見るのがまず一つのポイントでしょう。
女性だけでなく、男性の年齢も影響していることを忘れてはいけません。
②不妊原因
例えば、男性不妊にも対応しているところでは、精子の面においても、影響を受けます。
これは、男性不妊治療をしていない施設と比べれば、悪く見えるかもしれません。
③治療歴
これを明らかにするのは、とても難しいかもしれませんが、
どのような不妊治療歴かにもよります。
初めての不妊治療なのか、これまで何度も経験をしているのかによって、
採卵をするときに取れる卵の数なり質は異なります。
こうした対応している患者さまの背景と医師や培養士の技術が合わさって妊娠率という数字は出てきます。
なので、ただ出てきた数字だけで何かを判断するのはとても難しい話と言えます。
こうしたすべての数字を細かに説明した上で、妊娠率を公表するというのは、大切なことですが、とても大変なことです。
インターネット上などで簡単に見える妊娠率というのは、そうしたある程度「浅い」ものであることも考慮して、
最終的には直接医師や培養士の話を聞いた上で、妊娠率についての理解をするのが良いのではないでしょうか。