ピロリ菌をご存知でしょうか。
ご存知の方は、胃潰瘍や胃がんなどの胃に関する病気ということで理解されている方が多いのではないかと思います。
実は、このピロリ菌、不妊とも関係があることがわかってきています。
ピロリ菌と不妊症の関係とは…
女性がピロリ菌に感染していると、ピロリ菌に対する抗体を持ち、
この抗体が精子と反応するために精子の運動性を低下させて、卵子との融合を妨げると見られています。
さらに、CagA(病原タンパク質)陽性の菌に感染すると、胎児の死因ともなる妊娠高血圧腎症のリスクが高まるという報告もあります。
男性では、ピロリ菌に感染していると、精子の運動性、生存率、正常な形状の精子数が低下してしまうことがわかっており、
男女ともにピロリ菌に感染することは不妊症となるリスクを増加させてしまう可能性があるのです。
続々と証明されるピロリ菌と不妊の相関を示す論文
Can Helicobacter pylori infection influence human reproduction?
Moretti E et al. World J Gastroenterol. 2014 May 21;20(19):5567-74
2002年に筆者らのグループが最初にピロリ菌と不妊に関して報告しています。
血中のピロリ菌抗体検査で、コントロール群では29.7%に対して女性不妊の44.8%がピロリ菌抗体陽性であったというものです
血液検査陽性の女性全例が卵胞液でも陽性でした。
2004年には日本の研究グループでも同様の報告がなされました。
2009年には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)症例でも、ピロリ菌IgG抗体陽性例が、対照群で20%なのに対しPCOS群で40%と、PCOS群で有意に高いとの報告もされました。
その後、2010年には、原因不明不妊の女性の頚管粘液中に検出されてインビトロで精子の侵入を阻害することがわかりました。
加えて、ピロリ菌は妊娠後のリスクにもなることが確認されています。
状況に合わせて、ご夫婦でのピロリ菌の検査などを受けてみるのもよいかもしれませんね。