透明体開孔法という技術について紹介いたします。
特に凍結融解胚移植を行われる方にとって、大切な情報となります。
透明体開孔法(以下、AHA)とは
受精卵へ、分割と成長を重ね胚盤胞となり(受精後おおよそ5日目)、
その後、卵を覆っている透明体を破り、出てきます。
この時、卵を覆う透明体にごくわずかな穴をあけ、その脱出を助けようとする技術。
これが透明体開孔(口)法といわれ、アシステッドハッチングやAHA(アハ)と呼ばれたりします。
適応
基本的には、良好な胚を戻しても、妊娠成立がなく、着床障害が疑われる場合に行われますが、
ご希望がある場合には、初めから行う事もあります。
透明体開孔(口)法にリスクはないのか?
膜とは言え、レーザー等を使い、穴をあけようということなので、
当然考えるのが、そこにリスクはないのか?ということだと思います。
現時点での見解としては、今回紹介する論文の結論でもありますが、
AHAを行ったことによる出生児への影響はない
と考えられています。
具体的に見てみましょう。
Risk of major congenital anomalies after assisted hatching: analysis of three-year data from the national assisted reproduction registry in Japan (Fertil Steril 2015 Jul; 104:71-78.)
これは日本のデータです。
期間:2010年1月から2012年12月
対象:単一胚移植72125周期
└①新鮮胚移植 18572周期
└②凍結初期胚移植 6412周期
└③凍結胚盤胞移植 44909周期
についての研究を行ったものです。
その結果、AHAは主要な先天異常のリスク上昇はみとめられませんでした。
出生児の性別の割合はほぼ同等で、出生児の体重も、ほとんど変わりませんでした。
また、以前、AHAをすると一卵性双胎のリスクが上昇するのではないかとの報告もありましたが、本研究では、AHAによる双胎率の上昇はありませんでした。
一方、わずかに早産が増えていたほか、流産率が上昇していました(28.6% vs 25.9%)。
今回の日本の調査の患者背景をみると、AHAを行った方のほうが、平均年齢がやや高く、不妊原因として男性因子のある割合も高かったこと、
また、一般的にもAHAは過去に妊娠できなかった方により行う傾向があるなど状況がよくない方に多く行った可能性があることから、
AHAの技術そのもの以外に、そういった患者背景も流産率を上昇させた可能性もあります。
実際に、海外のデータにおいては、AHAにより流産率は上昇しないとの報告もあります
(Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD001894)。
これらによって、AHAの安全性について、出生児の先天異常や染色体異常のリスクを上昇させない安全な技術であることが示唆されたと結論付けています。
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