卵子の老化が多く取り上げられるようになり、昨今注目を集めている「卵子凍結」。
若いうちの卵子を凍結しておくことで、加齢に伴う卵子の質の低下を凍結によって防ぎ、妊娠する力を残す方法です。
しかし、日本産科婦人科学会をはじめ、多くの施設では適応に対して消極的なことは意外と知られていないのではないでしょうか。
問題となる社会的適応についてみていきましょう。
卵子凍結とは?
体外受精と同様に、卵巣刺激を行い、複数の卵子を未受精の状態で凍結保存することを指します。
受精卵の凍結、胚凍結とは大きくことなるので注意が必要です。
また、昨今注目されている卵巣凍結とも大きく異なります。
社会的適応による卵子凍結とは?何が問題なのか?
難しい言葉に感じますが、とても簡単で、健康状態の方が卵子凍結を望む場合を指します。
パートナーの不在や仕事の都合など社会的な要因で今すぐに子どもを持つことはできないが、
加齢による影響を考慮して、若いうちに卵子を凍結しておこうという考え方です。
この考えに対して「推奨しない」という考えが示されているというのです。
何が問題だといわれるのでしょうか。
卵子凍結「推奨せず」 健康な女性 出産先送りに警鐘 日本産科婦人科学会
http://www.47news.jp/47topics/e/262445.php
体への負担・経済的な負担・成績の問題
体外受精も含めて、最も女性にとって負担がかかるのは採卵です。
毎日のように排卵誘発剤を注射し、複数の卵胞を育て、そのプロセスでは卵巣過剰刺激症候群などの副作用も起こりえます。
それでもなお卵子凍結するのかということが第一のハードルです。
そして、実際にそうした排卵誘発や保存更新も含めて考えると、妊娠に十分な数の卵子を凍結するためには、
費用としてもおおよそ50万円から100万円程度かかるとされます。
この費用面の負担が第二のハードルとなります。
そして最も難しいのは成績の問題です。
治療の先延ばしの温床になるリスク
医学界からのコメントをまとめると、最も多くのコメントとしては、治療の先延ばしになってしまうリスクを指摘しています。
2013年9月に報告されたはらメディカルクリニック(http://www.haramedical.or.jp/)に関する記事によれば、
32例の卵子凍結を実施したものの凍結して使用したものは1例もない
http://allabout.co.jp/gm/gc/427924/
と報告されています。
当院の考え方
当院は社会的適応の卵子凍結も行っています。
実際に出産している患者さまの例も増えてきており、進める上ではいくつかのポイントがあるように思います。
患者さまとの共通理解
治療的な面でのデメリットの正しい理解を持っていただくことです。
当院ではセミナーへの参加を必須としています。
また、心理的なサポートも充実させ、患者さまにとって必要十分な状態の中での意思決定や自己実現をサポートしています。
過去に心理カウンセラーが書いた記事は以下から確認ください。
卵子凍結が最も有効であるのは、やはり若い世代であることは疑う余地はありませんが、
患者さまとの協力とこまやかな対話によって、有意義な方法にできる可能性はあると私たちは考えています。