卵子の老化が叫ばれて久しく、不妊要因の最大要素は年齢であることは
少しずつ認識されているように思います。
しかし、実際にはどれくらいなのかまではあまり把握されていないかもしれません。
改めて数字的に理解しながら、年齢と不妊の実態を把握しましょう。
論文データに見える「妊娠率」の低下
一般的な妊娠率については下記にまとめておりますので参考にしてください。
今回は、論文データから40歳以上に絞ってみてみたいと思います。
Analysis of 2,386 consecutive cycles of in vitro fertilization or intracytoplasmic sperm injection using autologous oocytes in women aged 40 years and above
この論文は、エジプト カイロの大学病院で行われたもので、40歳以上の女性約1600名に対して体外受精・顕微授精を行った
合計約2300周期の分析を表したものです。
妊娠率、流産率、出生率という観点で見てみます。
①出産率(出生率)は6.7%
40歳 10%
41歳 7%
42歳 5%
43歳 2%
44歳 0.7%
45歳以上0.5%
38歳から大きく低下する出産率ですが、細かく見ると43歳でもまた一つ大きな下落が見えます。
もう一つ掘り下げると、以下のようになっています。
②採卵あたりの妊娠率(全体平均)は17%
40歳 22.4%
41歳 17.2%
42歳 14%
43歳 7.8%
44歳 3.6%
45歳以上 3%
やはり43歳で大きく下がる傾向があるようです。
③流産率は44.8%
40歳 39%
41歳 44.4%
42歳 51.3%
43歳 64.3%
44歳 75%
45歳以上 67%
流産を避けることの重要性
いかに流産しないようにするかということがよく言われますが、
流産となってしまう事で、実際には3か月程度治療ができなくなります。
それは、40歳以上の方にとっては非常に貴重な時間でもあります。
もちろん、流産が及ぼす心理的な喪失体験の負担の大きさもあります。
年齢を重ねると、流産率はもちろんですが、そもそもの妊娠率にも影響してきてしまい、
現実的に考えた際に治療をすることでの解決策を見出しにくくなります。
実際のケースに直すと、
「そもそも受精卵ができない」
「受精卵ができても育たない」
「受精卵や胚盤胞ができても着床に至らない」
という状態になるためどうしても対策が限られます。
このため、海外では卵子提供という考え方が非常に一般的となっています。
若い卵子にすることで、受精率や胚盤胞になる確率は格段によくなるためです。
日本では倫理的な観点から限定的な適応となっていますが、卵子提供の可否はともかくとして
こうした知識を早く知っていただき、妊娠計画に役立てていただきたいです。
現時点では、若返りを行う治療はありません。
年齢による制限を受け入れながら、正しい治療の選択のために、正しい知識をお役立てください。