不妊治療や婦人科、あるいは泌尿器科の治療と漢方は切っても切れない関係にあります。
効き目にはかなり個人差があるものの、月経困難症、更年期障害をはじめとする諸症状に漢方薬はよく使われているのが実情です。
妊娠中の女性にも、漢方薬は比較的よく処方されます。
しかし、「漢方であれば何でも体によく安全!」という考え方をする方も多くいらっしゃいますが、それは大きな誤解と言えます。
具体的に見ていきましょう。
漢方=安全、ではない?! 論文に見る「漢方の副作用」
漢方薬なら安心との漠然としたイメージをお持ちの方も多いと思いますが、
実際には、子宮収縮により流早産のリスクが上昇する可能性が指摘されていたりするものもあります。
添付文書で妊婦は内服しないことが望ましいとわざわざ書いてある成分も少なくありません。
妊娠中の内服が推奨されていない漢方薬は色々ありますが、
代表的なものとしては、
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
- 潤腸湯(じゅんちょうとう)
などがあります(ともに、トウニン、ボタンピ、ダイオウが流早産や子宮収縮作用があるとされています)。
妊婦を対象とした論文で、漢方の副作用について指摘をしているものがあります。
Safety evaluation of commonly used Chinese herbal medicines during pregnancy in mice (Hum Reprod 2012; 27: 2448)
本論文では、着床後から胎児が成長するまでのさまざまな妊娠期間において、
妊娠中に20の成分
(白朮、トウシ、甘草、芍薬、センキュウ、陳皮、山薬、沙参、地黄、川続断、桑寄生、芍薬、ガイヨウ、黄耆、当帰、杜仲など)
をマウスに投与した場合の副作用について調べています。
その結果、多くの成分で、(成分により)
先天奇形、流産、胎児の成長発達障害、低出生体重児、多指症、欠指症のほか、
胎児死亡、母体死亡とも関連していました。
もちろん、この実験がマウスで行われており、ヒトに即座に適応できないことも理解できますが、
同じ動物でこういったショッキングな結果が出ていることは知られてしかるべきです。
どうすればいい?漢方との付き合い方
漢方薬の特徴は、英訳すると非常にわかりやすく、
Chinese herbal medicines
つまり、ハーブの一種と解釈もできますし、立派な薬(Medicines)でもあるわけです。
補助的な役割も、治療効果も双方あるような印象です。
不妊治療は妊娠(出産)できるか、できないかという究極的な成果が求められるために、
忘れられがちですが、不妊や妊娠というのは、外科的(西洋医学的)な処方だけでは解消できない側面があり、
東洋医学的な治療も欠かせません。その点で、漢方は非常に重要です。
ただ素人見解で接するには、リスクがあるということです。
ではどう付き合うのがよいか。
これについては専門家と相談をするのが良いのではないかと思います。
薬に対しての知識も、治療計画も一緒に考えてくれるドクターであるなら、
共有して相談をしてみるのがよい選択だと思いますし、高輪院には漢方相談もありますので、
お声がけいただくのもよいかもしれませんね。