セミナーなどの場においても、よく出てくる質問で、
「GV卵やMⅠ卵でも培養できますか?」
という内容があります。
卵巣刺激をした際に、採れる成熟卵とその時一緒に含まれる未熟卵と、
一般に多嚢胞性卵巣症候群などの方に見られる未熟卵とでは定義が大きく異なります。
後者の未熟卵であれば、体外で成熟培養ができます。
これはIVM(未成熟卵子の成熟体外培養)という技術です。
今回はこの技術の有効性について解説します。
IVM(未成熟卵子の成熟体外培養)の有効性は?
In vitro maturation as an alternative to standard in vitro fertilization for patients diagnosed with polycystic ovaries: a comparative analysis of fresh, frozen and cumulative cycle outcomes
Human Reproduction, Vol.30, No.1 pp. 88-96, 2015
論文のデータと共に解説していきます。
2007年3月~2012年12月の間に、PCOSで採卵を行った121人178周期についての研究したものです。
内訳は、IVMが56人80周期、通常IVFが65周期98周期です。
IVMから新鮮胚移植時のデータ
新鮮胚移植において、IVMと通常の体外受精の間で統計学的有意差はありませんでした
ここまでですと、IVMは治療成績は悪いのではないかと思われるかもしれませんが、
まだ先があります。
IVMから凍結融解胚移植
現在の主流は凍結融解胚移植であることは多くの方がご存知かと思います。
凍結融解胚移植においては、妊娠率・流産率・生産率で差はなかったのです。
加えて、生まれた新生児に関する差はなく、OHSSの頻度は、IVMが0%に対して、通常IVFは7.1%でした。
IVMの有効性についてのまとめ
IVMだからこそ得られるメリットを整理しますと、
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OHSSの発症可能性がない
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薬剤等が通常の体外受精に比べて少なく、その分安価である
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通院回数自体を抑えられるため、仕事との両立もしやすい
こうしたメリットを備えています。
現在では主に、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方への適応が主となりますが、
今後は一般の方はもちろん、がんなどの病気にかかられている方の妊娠する力を残すための
採卵方法としても注目が集まっています。