コラム

臨床心理士の視点から見た卵子凍結の社会的適応について

こんにちは、生殖心理カウンセラーの菅谷典恵です。

今回は社会的卵子凍結について臨床心理学的に考えてみたいと思います。

 

社会的卵子凍結とは?


社会的卵子凍結とは、簡単に言うと、

「子供はほしいけれど、今すぐではない」

という方が、自身の妊娠する力が少しでも高いうちに、

卵子を凍結保存しておくことで、妊娠する可能性を保持しておこうというものです。

 

当院は、社会的卵子凍結を実施している数少ないクリニックのうちの一つです。

ただし、社会的卵子凍結については、様々な賛否があります。
「実際に使用するかわからない卵子を凍結するために、採卵のための針を身体に刺すことは問題があるのではないか?」

「30代前半までなど、年齢に区切りをつけた方がよいのではないか?」

「妊娠を先延ばしすることになるだけではないのか」

等のいろいろな意見があります。

医学的には確かにいろいろなリスクがあります。

どういったところにあるかと言うと、卵子を凍結するためには、

1 卵巣刺激:排卵誘発剤を注射して卵巣内に複数の卵胞を育てる

2 採  卵:卵巣に針を刺し、卵子を回収する

というプロセスが必要です。

 

このプロセスに、排卵誘発剤の副作用や、採卵をする際の腹腔内(お腹の中)出血のリスクの問題など、

可能性は低いと思われますがクリニックとして説明しなくてはいけない事柄がたくさんあります。

果たしてその危険を冒してまで卵子を凍結する意義があるのか?といわれるのも当然だと思います。

生殖心理カウンセラーだからわかること 

社会的卵子凍結を実施された方に見える傾向とは?


 

その上で、実際に社会的卵子凍結をされた方々のお話をお聞きして感じるのは、

 

自己決定をした満足感

 

を持たれているということです。

子どもを産みたいと思っているがパートナーが現れず焦ってしまう、あるいは、今はまだ仕事を頑張りたいからもう少し時間がほしい、

そんな今、今後子供を持つためにできることをしておきたいという気持ちを持った方が、卵子を凍結できたことでほっとしたような安心感を持たれます。

 

臨床心理学では、社会通念に縛られ過ぎることのない自己実現を大切に考えます。

その行動が自分のためになっているかということで考えると、

社会的卵子凍結が自分自身の効力感につながるものならば、十分に意義のあることと考えられます。

 

もちろん前述の採卵のリスクや、妊娠までの厳しい確率、実際の出産のリスクや発生する費用なども十分に理解していただいていることが前提になります。
迷われている場合はお勧めしませんし、迷う気持ちはいつでもお聞きし、お考えを整理する場を提供します。

医療的な面や費用面を理解し、ご自身の気持ちも整理して初めて、実施が可能になります。

 

卵子を凍結された後は「京野アートクリニック高輪に私の卵子が待っていてくれる」という安心感とともに、

パートナー探しを頑張っていただきたいと思います。

 

もちろん、卵子凍結後の心理的サポートも行っています。

 

 

以上、思いつくままに述べてみましたが、ご自身の自己実現を応援します。

自分自身の納得・満足の気持ちを大切に、毎日を過ごしたいですね。

 

 

妊活ノート編集部

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妊活ノート編集部です。医療現場での当たり前を、より分かりやすい情報としてお届けします。正しい知識を得ることで、一日でも早い治療卒業のサポートをしたいと考えています。

菅谷典恵

菅谷典恵

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臨床心理士、生殖心理カウンセラー、がん・生殖医療専門心理士
京野アートクリニック(仙台、高輪)にて生殖心理カウンセリングを担当。
治療のことはもちろん、仕事と治療の両立、ご夫婦の考えの温度差、あらゆる人間関係など、どのようなご相談でもお受けしています。
治療もプライベートも快適に過ごすためのサポートとなるようなカウンセリングを目指しています。

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