妊孕性温存の手法の一つとされる卵子凍結(未受精卵子凍結)は、
妊孕性がある(高い)うちに卵子を採卵・凍結することによって、
卵子の質の低下を防ごうとする手法です。
具体的にどのような手順で進められるのか見ていきましょう。
卵子凍結の手順は?
卵子凍結は、おおむね体外受精と同じ流れで、受精の前までの部分のみ進行していきます。
つまり、基礎的な検査・問診の後は
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卵巣刺激
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採卵
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凍結保存
というように進んでいきます。
実際のところ、卵子凍結を行うことができる医療機関は多くありません。
また、後述しますが、社会的適応の場合には、様々な制約があることに注意が必要です。
卵巣刺激
卵巣刺激は一度の採卵でできるだけ多くの採卵を行うために行われます。
卵子凍結を行う際には、多くの場合、卵巣刺激を伴います。
1つの卵子では妊娠しない可能性が高いためです。
年齢にもよりますが、卵子凍結からの出産率はおおよそ5-10%です。
これに年齢因子が掛け合わされる形になります。
そこから数学的な卵子の数は見えてくると思いますが、もちろん本人の体質等が優先的に考えられます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方などは強い卵巣刺激が副作用を誘発しかねないので、卵巣刺激の弱いものにせざるを得ません。
そのため、仮に5%で考えれば、1人の赤ちゃんを出産に至るまでの卵子数で20個を採卵し、凍結しておく必要があります。
一度当たりの採卵でとれる卵子の数は20個よりも少ないことも多いため、
2回、3回の採卵を行う必要もあるかもしれないということを念頭に置いて考えるとよいのではないでしょうか。
当然そうした費用や負担もさることながら、卵巣刺激を行う際の副作用である卵巣過剰刺激症候群(OHSS)についても注意が必要です。
採卵
採卵は通常の体外受精と同様に行われます。
採卵した卵子のすべてが保存されるわけではなく、成熟卵として認められるものだけが凍結保存されます。
凍結保存
凍結は日本国内の治療機関であれば、おおむね「ガラス化凍結法」(Vitfication)と呼ばれる方法で-196℃に凍結されます。
このとき注意するのは、凍結本数についてです。
凍結状態から融解する場合に、未受精卵子はダメージを受けます。
そのため、再凍結をするということが推奨されないため、
使う分ずつ凍結をしておく必要があることは念頭に置いておきましょう。
※多くの医療機関では、凍結本数に応じて年間の保存料が設定されており、
本数が増えれば保存料が高くなることがありますので、ご確認ください。
卵子凍結が適応となるのは?
卵子凍結は誰もが受診できるわけではなく、また、誰にでも推奨されるわけではありません。
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悪性腫瘍の治療(抗がん剤や放射線の治療)を受けるため、将来卵子が採れなくなる可能性がある
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体外受精を予定していたが、採卵時にご主人の精子が採れなかった(射精不能・急に来院できなくなったなど)
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お仕事の関係などで現在出産できないが、将来のために若い卵子を保存しておきたい
が主に適応となる方です。
1の方を主に医学的適応といい、2の方を社会的適応といいます。
卵子凍結の治療効率とは?
卵子凍結は世界的に見ても、多くの症例があるため、成功例も多くありますが、
実は卵子凍結に対して治療効率が悪いと考える医療関係者も多く、
実際に胚凍結との成績の差でいえば、治療効率が決して良いというわけではありません。
卵子凍結後の治療ステップは
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融解
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受精
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移植
となっていきますが、
胚凍結に比べ、融解、受精 のステップが多いことで治療効率は低下します。
※融解後の生存率は90%以上といわれます。
一見、アンチエイジングかのように、卵子凍結が語られることもありますが、
こうした良い点・悪い点があるのが実際のところです。
最適な治療計画を立てましょう。