ストレスが不妊に与える影響はこれまでいくつも検証されてきましたが、
一つの結論を得るのは非常に難しいところです。
影響があるとする考え方、影響がないとする考え方がありますが、
大切なのは、それらを知ったうえで、「どのように対応するか」ではないでしょうか。
ストレスと不妊には強い関連性がある、という説
ストレスを感じるとその影響は「脳」で受け取られます。
脳はカラダに対して、ストレスに対応して!という指令を出します。
そしてそれが長時間にわたると、その対応に追われ続けることになります。
同じ視床下部という機能が排卵などのためのホルモン分泌をつかさどっているわけですが、
ストレス対応に追われ、排卵への手が回らなくなれば、それが排卵障害につながる可能性があるという考え方です。
参照:Stress reduces conception probabilities across the fertile window: evidence in support of relaxation Germaine M. Buck Louis,et al. Fertil Steril.2011 June;95(7):2184-2189
この論文は米国で行われた研究で、ストレスを受けることによって発生するアルファミラーゼという物質の濃度と妊娠率に関係を調査しました。
ストレスというと悪いものばかりを想像しがちですが、実際には良いストレスと悪いストレスがあります。
たとえるなら、良いストレスは笑顔でいる状態を指し、悪いストレスは苦しんでいる状態を指します。
このアルファミラーゼは良いストレスがかかると低くなり、
悪いストレスがかかると高くなる性質を持ちますので、アルファミラーゼと妊娠率の相関関係を追及したところ、
最も濃度が高かったグループは、最も低かったグループに比べて12%妊娠率が低下したという結果を得ました。
ストレスと不妊には関係がないという説
最終的に妊娠率に差がついたとしても、それによって妊娠しなかったという証明ができるわけではないのが、
不妊治療の難しいところです。そうした観点からストレスと不妊の相関関係がないということも言われます。
参照:Emotional distress in infertile women and failure of assisted reproductive technologies: meta-analysis of prospective psychosocial studies J Boivin,et al. BMJ. 2011 Feb;342:d22.
こちらはイギリスでの論文ですが、3000組超のカップルの臨床結果を統合して、ストレスと治療結果の相関関係を見たところ、
関係あるというデータは見つけられなかったというものです。
こうした論文が実はたくさんあるのは意外と知られていません。
ただし、これをもってしても、関係がないかもしれない・・・ということであって、断定はできないのが実情です。
ストレスとの向き合い方と治療計画
このようなデータを見たり、感覚的にとらえたりしても、
「ストレスが不妊に与える影響」はあるように思われる方が多いと思いますが、
関係があるにせよ、ないにせよ、ストレス自体をなくすことは非常に難しく、
「どのように対応していくか」が極めて重要です。
ストレスは日々あふれており、それを良いストレスに振り分けるのか、悪いストレスに振り分けるのかは捉え方次第ですし、
例えば、つらい日は家事をさぼってみたり、そうした小さなご褒美を与えることでもストレスは減ると思います。
しかし、不妊治療自体は多くの人にとって楽しいものではないと思います。
以前、始め方の記事でも書きましたが、始める際に終わりを決めたり、
早く治療を終えるような治療計画を組むなど、専門家の意見も取り入れながら、
不妊治療を終わらせることに注意を向けるのも選択肢の一つです。