女性の加齢による影響はよく言われ、一方で男性についてはさも年齢の影響がないかのように考えがちですが、
大きな間違いであり、男性にも同じように年齢の影響があることが明らかにされています。
ここでは男性の加齢による不妊への影響について解説します。
男性も加齢によって影響をうけるのか
日本産婦人科学会におけるデータを確認すると、まず年齢にかかわらず不妊の原因の半分近くに男性が関係しています。
加えて、精液の所見にも確実に悪影響が見られており、流産率が2倍になるという報告もされています。
運動精子の数などが確実に減少していることが認められるため、男性にも加齢による影響があることは
容易に認められると思います。
妊娠しにくいだけではない!?男性の加齢よる影響
アメリカの卵子提供プログラムのデータ※によれば、40歳以上の男性は
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自然妊娠に至る可能性は25歳と比較しても半分
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体外受精を実施しても不成功となる確率が20代の1.7倍
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流産率は24%、51歳を超えると40%以上に
※卵子提供を受けることで、女性側の年齢要素をなくして考えることができます
これは年齢により精子に影響が出ることに起因すると考えられており、
具体的には、精液量の低下、運動率の低下、奇形率の上昇などの精液所見の悪化、
精子のDNA損傷率上昇、染色体異常の増加、遺伝子変異の増加などの精子機能低下、
また精子と卵子はDNA損傷を修復しあうことがありますが、こうした相乗効果が得られにくくなること
に影響を受け、妊娠率にも流産率にも大きく関与しているのです。
さらにある!?父親の年齢と児への影響
それだけでなく、父親の年齢によって生まれてくる子供(児)への影響が高まることも指摘されています。
具体的には、
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低体重出生の増加
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総合失調症になる確率が50歳以上の父親は20-24歳の父親に比べて2.96倍(Malaspine et al.,2001)
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自閉症スペクトラムは40歳以上の父親は20代の父親に比べて5.75倍(Rechenberg et al .,2006)
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染色体異常(ダウン症)発生率は45歳以上の父親は20代の父親の1.3倍(Yang et al.,2007)
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常染色体優性遺伝疾患は50歳以上の父親で20代の父親の7.8から9.5倍(Risch et al.,1987)
※()は論文参照元
が指摘されています。
女性は28歳ごろから年齢の影響を受け始めるのに比べると、
男性年齢の影響を受けだすのが35歳だとされ、若干遅いのは確かですが、
確実に年齢を受けることは間違いありません。
不妊症は夫婦の病、年齢の病です。