不妊においても最も影響度の高いものが男女ともに「年齢」です。
妊娠する力と女性の年齢については非常に関係が深く、
①流産率が高まる
②妊娠率が低くなる
ことが報告されています。
年齢による流産率の上昇
参照元:日本産婦人科学会「ARTデータブックより」
妊娠率は35歳を境に急激に低下していき、
一方流産率も同様に急激に上昇していきます。
妊娠率と流産率は38歳を境に逆転し、以後下がることなく上がり続けていきます。
つまり妊娠することができる期間には限りがあるということです。
なぜ流産率が高くなるのか?
妊娠率というのは、正しく表現すると
「受精率」「胚盤胞への到達率」「着床率」に分けられますが、
このそれぞれが下がっていきます。
特に問題とされるのは、加齢によって「卵子の質」が低下してしまい、
それが原因で「染色体異常」を引き起こすということです。
染色体異常となると、実はそのほとんどは妊娠することなく、流産してしまっているのが大半です。
着床前スクリーニング(PGS)という考え方
細かな説明の前にまず、日本においては着床前スクリーニングは現在認められておりません。
そのためアメリカ、イギリス、フランス、北欧、ロシア、トルコ、アルゼンチン、中国、韓国、インド、タイなど、
多くの国で着床前スクリーニングが実施されおり、この治療を受けるために海を渡るという方も少なくありません。
日本産婦人科学会では、命の選別につながるという倫理的理由と治療成績の検証段階であることからそのようにされていますが、
ついにパイロットスタディが開始されたとして報じられています。
海外で主に行われるPGS(着床前スクリーニング)という方法は、胚の染色体異常を事前に調べ、
異常の無い胚を選別し移植に用いるというものです。
年齢とともに染色体異常が増え、それが妊娠率や出産率を下げてしまうことであるのは、すでに明らかになっています。
胚を移植し、妊娠が成立しても、あるいはその先流産したとしても、女性にとって妊孕性と大きく関係している「時間」を奪われてしまいます。
こうした治療法が速く日本でも認知され、承認され、適応されていけば、高齢出産における問題解消に貢献するのではないかと期待されています。
様々な技術がこれからも出てくるものだと思いますが、
まずは「年齢」が与える影響を正しく理解した上で、
ご夫婦でのライフプランを立てていくことが何より重要ではないかと思います。