治療法自体は確立されてきている不妊治療ですが、治療計画は十人十色ともいわれます。
その理由は、不妊となっている原因はもちろん、個々人のライフプランやポリシーが多様化していて、一人ひとり異なるためです。
基本的な考え方として治療計画は、大きく2つのシナリオに分けられます。
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原因が明確な場合の治療計画
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原因が特定されない場合の治療計画
原因が明確な場合にはそれに適応した治療がなされますが、
ここでは原因が特定されない場合の治療計画について解説していきます。
ステップアップかステップダウンか
ステップアップ
治療計画を組むうえで最もスタンダードなのがこのステップアップです。
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タイミング指導(6周期程の経過観察)
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卵巣刺激法(クロミフェン療法はhMG-hCG療法などを同様に3-6か月)
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人工授精(6周期まで)
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体外受精などの高度生殖医療へ
という考え方で、図にまとめると以下のようになります。
注意)上記は35歳未満の女性を対象としています。
35歳を超えてくると、女性の妊孕性(妊娠する力)に低下がみられるようになります。
最も大きな要因とされるのは卵子の加齢による「染色体異常の増加」です。
そのため、基礎検査等によって卵巣予備能や男性不妊の有無を検査した上で治療計画は立てられます。
ステップダウン法
この考えが出てきている背景にはやはり「年齢」が影響しています。
不妊治療を開始する年齢が35歳を過ぎている場合などに、
「とりあえず様子を見て」
ということで1年を使用してしまえば、その時間によって大きく妊娠率を下げてしまいかねず
想像以上にシビアな時間との駆け引きが必要とされます。
そのため、時間的にも費用的にも余裕があるときに、最も効果的な方法からトライするという考え方が広がってきています。
もちろん、そうした年齢要素以外でも、卵子や精子は個別差があるため、
一例では、体外の環境に耐えられないため体外受精では受精に至らないけれど人工授精で授かったというような例もあります。
大切なのは目的を忘れないこと
不妊治療が目指すことは、お子様を授かっていただくことです。
そして、忘れてはいけないのは、患者さまの人生においては、治療終了後も長い人生があり、
育児などの様々なライフイベントがあります。
患者さまにはそうした大きな視点から、ご自身の治療計画を考えてほしいと思いますし、
一方で医療者としては、卵巣刺激法やステップアップなど、
様々な考え方や技術がありますがそうした手段が目的になってしまうようなことがないよう、
一人ひとりの患者さまに向き合う心を大切にしていきたいと思います。