男性不妊というと無精子症のような極端なものを想定されるかもしれませんが、
実に最も多いのは乏精子症という「基準値に達さない状態」の症状です。
そしてその多くは原因が見当たらないけれど、精子数なり運動率に問題があるという方です。
そしてこの多くのケースで「酸化ストレス」がかかわっているとも考えられているのです。
酸化ストレスとは
酸化というのは、酸素と物体が触れてしまうことで起こる現象です。
リンゴを切ったままにしておくと茶色っぽくなったり、鉄が錆びたりというようなものがイメージしやすいと思います。
ヒトの体内においては、「活性酵素(フリーラジカル)」が体をさびつかせることで、さまざまな不調を招きます。
つまりヒトの参加の主な原因は「活性酵素」であると言えます。
ただ、ヒトにはこの活性酵素を無毒化する力があります。
主に、ビタミンCやE、コエンザイムQ10などの「抗酸化物質」がその働きを担います。
そのようにして、酸化させようとする働きと、酸化させまいとする働きが均衡している状態が通常なのです。
ただし、何かしらかの原因で、活性酵素によるダメージが増加したり、あるいは防御しようとする力が弱まったりすると、
酸化の度合いが高くなります。
この酸化に傾いた状態を「酸化ストレス」と呼ぶのです。
酸化ストレス(≒活性酸素)の原因は?
酸化ストレスには、活性酸素が密接に関係していますが、この活性酸素の発生原因は実にさまざまです。
そもそものエネルギーを作る際にも発生しているものでもあるので、あって当たり前です。
ただし、これが過剰に発生してはいけません。
主に生活習慣では、タバコ、飲酒、食生活あるいは肥満といったものが活性酸素の発生要因となります。
そのほか、精索静脈瘤、前立腺などの炎症、異常な精子からも活性酸素は大量発生することが言われており、
禁欲期間が長すぎれば、酸化ストレスに暴露される時間もながくなるため、精子はその影響を受けやすくなります。
酸化ストレスによる影響は
そもそも精子には、十分な抗酸化酵素が備わっていません。
そのため、活性酸素と精子は非常に相性が悪いのです。
酸化ストレスを受けることで、精子の頭部にあるDNAが傷つけられるほか、
精子の体部分の細胞膜が錆びてしまったりします。
DNAが傷けられれば、当然DNA損傷率が高くなりますので、結果として受精する確率、また受精できても流産する確率は高まります。
細胞膜の酸化は、細胞膜自体の柔軟性を低下させるため、精子の運動率は低下していきます。
こうして、受精しにくい、妊娠しにくい精子へとなってしまう可能性が高くなります。
酸化ストレスから精子を守るには
酸化ストレスから精子を守るには、いくつかの対策が考えられます。
①そもそも酸化ストレスの発生を抑える
タバコやアルコールの大量摂取、食生活などの生活習慣を見直して、そもそも酸化ストレスを抑えます
②抗酸化力を高める
食生活あるいはサプリメントなどを通じて、抗酸化力を高めることです。
代表的なサプリメントではコエンザイムQ10などがあります。
③男性不妊(炎症)がないかを診察を受ける
精索静脈瘤などは大量の活性酸素の発生要因となるため、検査して対応する必要があります。
④禁欲しすぎない
オーストラリアでの研究において明らかになったのは、毎日射精したほうがDNA損傷率は下がるというものでした。
精子が作られてから、射精に至るまでの時間を短くすることによって、活性酸素に暴露される時間を短くしたことが奏功したと考えられています。
参照:the 25th annnual meeting of the European Society of Human Reproduction and Embryology
多くの男性不妊の状態は、1か0かというわかりやすいものではなくて、
基準に少し足りないというようなものが多くあります。
そのため、明確に治療というのも難しく、こうした生活習慣改善のように、時間をかけて対応していく必要があります。
その他、生活習慣においても注意すべき点があるので、気になる方は以下も確認してみるとよいのではないでしょうか。