本日は患者さまからいただいたお手紙の一部を紹介させていただきます
京野アートクリニックでは、がん治療前に卵子や受精卵、精子、卵巣組織を凍結保存しておく妊孕性温存を実施しております。
妊孕性温存の対象となる疾患は主に、乳がんや血液疾患などの方が多くおりますが、
例えば、乳がんの場合、標準的な治療でもがんの摘出からその後の治療までで、
5-10年かかることなどもあり、凍結しておいた卵子や精子を使うまで長期間を要することもあります
また、妊孕性温存の実施時には、治療の副作用で妊孕性が喪失することが必ずしも確定しているわけではなく、「低下」にとどまるケースも多数有ります。特に乳がんの場合、そうしたケースが多いように思います。
もちろん温存しておいたといっても、それで100%妊娠できるということが保証されるわけでもありません。
だからこそ、患者さまの意思決定には大変な苦悩が伴います。
そのため、温存しておいた卵子や精子を使うということだけに価値があるというわけではなく、ときに使用せずに済む方もいらっしゃいます。
今回はそうした方からのお手紙の一部を紹介致します。
-以下、お手紙の一部抜粋です-
6年前に、乳がんでの治療を前に卵子を凍結保存していただきました。
長い間保存していただきましたが、この度廃棄申請をすることとしました。
2017年に結婚し、ホルモン治療中でありましたが、3年間で服薬を一旦中断し、その後自然妊娠することができ、2019年9月に元気な男の子を出産いたしました。
できれば2人目も欲しかったので、昨年も更新しましたが、2人目も幸いなことに自然妊娠することが出来、来月出産予定となっております。
・・・・(中略)
凍結卵子は、私の将来への希望でもありました。
結局使うことはありませんでしたが、大変感謝しております。
本当に有難うございました。
-お手紙の内容はここまで-
2021年からが妊孕性温存の助成金事業も始まり、より多くの方々がこの治療を選択しやすくなっていきます。
医学的には、凍結しておいた保存物は使わなければ意味を持たないのかもしれませんが、
心理社会的には、大変な意味を持つこともあります。
同時に、その価値を定義するのは患者さんお一人お一人だとも思います。
将来こどもを望む方々の一人でも多くが、「がんでもママパパ」を実現できるように、スタッフ一同精一杯治療にあたってまいります。
また、当院には同年代の不妊治療の患者様が多くいらっしゃいますが、
そうした方々が1人でも多く、乳がんや子宮頸がん、子宮体がん検診を受けられ、
がんに罹患されないこと、また万が一罹患された場合でも早期発見に至ることを心から願っています。