不妊治療の現場にいると、とにかく早く患者さんには病院の門を叩いてほしいと思いますし、日々多くの患者さんがいらっしゃる中では、どうしてもクリニックにくるのが当然と思いがちです。
しかし、それは「非常識な常識」というもので、クリニックを訪れるという敷居はそんなに低いものではありません。
そうした研究を一つ紹介したいと思います。
不妊治療を訪れるまでの期間は5年
出典:A Domar et al.,Barriers and factors associated with significant delays to initial consultation and treatment for infertile patients and partners of infertile patients. RBM online VOLUME 43, ISSUE 6, P1126-1136, DECEMBER 01, 2021
2021年に発表された内容ですので、ごく最近のデータといえます。
この研究では9か国(US、カナダ、UK、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、中国)における不妊治療カップル(n=1944:女性:1037人、男性907人、平均35.8歳)を対象に、不妊治療施設への受診までの期間、不妊症診断後の治療開始までの期間、治療開始後の妊娠に至るまでの期間等を調査しました。
結果
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医療機関を受診すつまでの平均期間は38.6ヶ月(約3年)
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不妊診断後の治療開始までの期間が23.6ヶ月(約2年)
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治療開始後から妊娠までの期間が19.6ヶ月(約1年半)
というデータが明らかになりました。
このデータに日本は含まれておりませんので、日本人がこうであるかどうかはわかりません。

しかし、上の図でもあるように、日本は世界的な調査でも生殖に関する知識レベルが低いことで知られていますし、不妊症にまつわる問題を非常にデリケートに考えますので、上記よりも短いと積極的に肯定する根拠を見出すのは難しいと感じます。
不妊治療に来るというだけでも、長期に渡る葛藤があるということが示唆されます。
これに加えて、仕事との両立のハードルがあるものと思いますし、
世界に比べて、低刺激や自然周期が多い日本なので、治療期間も人によっては長くなることも考えられます。
不妊治療クリニックの門を叩いていただけるということがどれだけ貴重なことか、改めて胸に刻んでおきたいと思います。