日本をはじめとした先進国で年々不妊の問題は取り上げられており、
今や社会的な大きな課題となっています。
加齢とともに変化する点もありますし、年々深刻化している点を鑑みますと、
原因がライフスタイルにあるかもしれないと考えられるのは、ごく当然のことかと思います。
その中でも、頻繁に取り上げられるのが、喫煙、飲酒、そしてコーヒーです。
今回はコーヒーの摂取と妊娠成績の関係についての最新のスタディを紹介できればと思います。
コーヒー摂取と妊娠成績の関係
今回、ご紹介するのは以下の論文です。
Impact of female daily coffee consumption on successful fertility treatment: a Danish cohort study
Julie Lyngsø et al.,
Fertil Steril July 2019Volume 112, Issue 1, Pages 120–129.e2
世界では、一日で20億杯ものコーヒーが消費されていると言われています。
特にヨーロッパではその習慣は強く、フィンランドは世界一高い摂取量で知られており、
デンマークは4番目にコーヒーを消費する国であり、成人1人当たりの平均摂取量は3〜4杯です。
今回はデンマークからの報告です。
生殖医療では、デンマークからの報告が多くありますが、高福祉国家であるがゆえに、
治療の結果や予後が匡で集約的に管理をされていることもあり、質の高い研究が多く知られております。
これまでの研究では、コーヒーの中のカフェインのみに注目するものが多くありましたが、
コーヒー中のフェノール化合物などの他の物質も重要な役割を果たす可能性があります。
今回の研究では、1,708人の女性と潜在的なパートナーが1,511人工授精サイクル、2,870 IVF-ICSIサイクル、および1,355 FETサイクルが対象となりました。
結果の要約としては、
ART患者間においては、コーヒー摂取によって、妊娠率に差が出なかったということでしたが、
一部人工授精サイクルにおいては、コーヒーを1日あたり1-5杯飲んでいる女性のグループで1.49倍の妊娠率、出生率が有意に高い傾向が確認されました。
しかしながら、そこに明確な因果関係や偶然ではないことの証明はできず、注意が必要としています。
総合的に考えると、調査結果は低から中程度のコーヒー消費が不妊治療の成功に悪影響を及ぼさないことを示しています。
もちろん人種間の差などはありますが、少なくとも現時点では、過剰に気にすべき対象として、
コーヒーを挙げる必要はなさそうですね。
ただ、いくらでも飲んだ方が良いということではなく、従来通り、2-3杯程度に1日当たり抑えていただき、
健康的なバランスを気を付けていただくのが現時点では対策と考えられるのではないでしょうか。