精子のDNA損傷がどのように妊娠に対して影響があるのか、について解説します。
精子のDNAは、活性酸素によってダメージを受けることで知られています。
精子にDNA損傷があると、どのような影響があるのか、という点について文献から紹介します。
精子のDNA損傷は妊娠の遅延、着床率の低下に影響がある
以下の論文を紹介します。
Double-stranded sperm DNA damage is a cause of delay in embryo development and can impair implantation rates
AidaCasanovas et al.,
Fertility and Sterility, Volume 111, Issue 4, April 2019, Pages 672-673
43組の不妊症カップルからの196個の胚を対象として、二重盲検での前向きコホート研究を実施しました。
一本鎖DNAフラグメント(ssSDF)と二本鎖DNAフラグメントdsSDFを、細胞質内精子注入に使用したのと同じ精液サンプル中で分析し、
タイムラプス技術を用いて胚の動態をモニターし、各胚分裂のタイミングを測定しました。
対象となった胚を低dsSDFおよび高dsSDFと比較すると、統計的に有意なデータを分割すると、
高dsSDF胚において、第二極小体、T4、T8、桑実胚および初期胚盤胞率の発生タイミングにおいて遅延が確認され、着床率は低下しました。
ssSDF間においては、胚の動態および着床率は有意な影響を受けませんでした。
一般に、精子のDNA損傷は受精卵へと発生していくプロセスにおいて、卵子の酵素によって修復されることが知られています。
DNA damage and repair in human oocytes and embryos: a review.
Ménézo Y
Zygote. 2010; 18: 357–365
しかしながら、女性が35歳を過ぎていくと、この修復機能の低下も確認されており、男性の年齢が上昇すると、より一層妊娠率が低下することが知られています。
精子のDNA損傷は、喫煙や肥満、糖尿病などの生活習慣によるもの、精索静脈瘤による影響などが挙げられます。
不妊治療を受ける上では、男性の生活習慣の改善も欠かせないものと考えられています。