最近では分煙や禁煙と言われ、喫煙できる場所が減ってきております。
煙草もどんどん値上がりし、喫煙者には肩身の狭い思いをしていることでしょう。
喫煙についての健康被害として肺がんや呼吸器疾患、心疾患は広く認知されています。
不妊への影響についてご存知でしょうか。
喫煙習慣によって不妊へ及ぼす影響は多数報告されています。
喫煙による影響の1つに卵子・精子の質の低下があります。
原因として、タバコに含まれるタールなどの成分が活性酸素を増やします
体内の活性酸素が増えすぎると酸化ストレスがかかり、体に問題を起こすといわれています。
酸化ストレスは卵子や精子の質の低下にも繋がると報告されています。
さらに喫煙による酸化ストレスがミトコンドリア機能低下やDNAダメージなど卵子・精子の質の低下を引き起こすと考えられています。
そのため当院でも抗酸化剤のサプリメントのビタミン剤やメラトニンなどのサプリメントを処方しています。
しかし、十分に卵子の質を改善しているかどうかの判断は難しいと言われています。
また、酸化ストレスは流産、早産、子宮内胎児発育不全の原因ともなるため、妊娠中の禁煙も必須となっています。
次に卵巣予備能力の低下も報告されています。喫煙者では、卵巣刺激ホルモン(FSH)の
基礎値が高値となり、黄体期では、プロゲステロンの濃度が低く、黄体機能不全のリスクが高まります。
卵巣予備力の評価方法として多くのクリニックで測定されている抗ミュラー管ホルモン(AMH)ですが、これが喫煙者で有意に低くなっています。
しかし禁煙によって改善する可能性も報告されています。
その他にも喫煙習慣による影響として、卵管のピックアップ障害と受精卵の輸送障害の報告があります。
ピックアップ障害は卵子-精子の受精機会を低下させます。さらに受精卵の子宮内腔への輸送の遅れにより、
子宮内膜の適切な胚受容時期(着床の窓)とズレを生じさせ、着床を妨げます。
これらのことから妊娠率の低下に繋がります。
そして、受精卵の輸送障害は異所性妊娠(子宮外妊娠)を増加させる報告もされており、
1日の喫煙本数に依存し、非喫煙者と比較して1-5本では1.6倍、20本以上では3.5倍まで上昇すると報告されています。
喫煙は精液所見にも影響を与えるため、女性だけでなく、男性側も禁煙が求められます。
妊娠を望むカップルに喫煙習慣があれば、まず取り組まなければならないのは禁煙であるといえます。
喫煙補助薬をはじめ、最近では遠隔診療で受けられる喫煙外来もあります。
禁煙について今一度検討頂く機会になればと思います。