子宮内膜受容能検査という検査について紹介いたします。
まず、「着床障害」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
一般的には、体外受精や顕微授精を3回以上行っても妊娠できないという
反復不成功の場合に、着床障害が疑われます。
着床障害に対しては、
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着床できない受精卵なのか
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着床できない子宮内膜なのか
大きく二つの可能性があります。
受精卵なのか、内膜なのか
受精卵の着床前検査については、多くのところでも取り上げられて、
日本産科婦人科学会もパイロットスタディを始めるという事で、
今最も導入が求められている検査の一つだと思います。
詳しくはこちらを確認ください。
話が少し変わりますが、特に日本において凍結融解胚移植が飛躍的に成績を上げてきたのは、
採卵した後に凍結しておくことで、子宮内膜がベストの状態で移植することができる
というこの方法ならではの特徴がありました。
受精卵の状態が第一ではあるものの、子宮内膜のコンディションを確認することはとても重要です。
子宮内膜に問題があるとすれば、
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子宮筋腫
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子宮内膜ポリープ
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子宮奇形
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黄体機能不全
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子宮内膜の癒着(子宮内膜症)
などが考えられますが、それ以外のものもあります。
本来、卵の発育と内膜の状態はリンクさせる必要があり、
通常胚盤胞移植は、排卵から5日目に移植するのが一般的といわれます。
着床するための最適な時期を
「着床ウィンドウ(着床の窓)」
と呼びますが、
反復不成功の状態にある方は、この「着床ウィンドウ」がずれている可能性が指摘されています。
これを検査するのが子宮内膜受容能検査(ERA)というものです。
日本では症例数が少ないですが、海外では多く行われており、実施のために海を渡る人も少なくないのだといいます。
子宮内膜受容能検査(ERA)とは
子宮内膜受容能検査(ERA)は、反復不成功の患者さまに対して行われる着床可能状態を遺伝子レベルで検査するというものです。
具体的には、
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着床期の子宮内膜の一部を採取し、
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238の遺伝子発現を一気に検査(アレイ)
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着床ウィンドウと胚移植の時期が一致しているかを確認し、
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ずれがある場合には胚移植日を調整する
という流れで行われます。
論文によれば、ERAの正確性は子宮内膜組織診を上回り、
かつERAの診断結果は同一患者において、初回検査後29-40ヵ月を経過しても再現性があることが示されています
ERAの有効性は?
上述の論文において示された有効性について要約すると
3回以上の反復着床不成功例の約25%に「着床ウィンドウ」のずれがあり、
ERAの結果にあわせて、個別化した胚移植(Personalized Embryo Transfer=pET)を行った結果
着床ウィンドウがずれている方が、ずれていない方と同等の着床率、妊娠率に向上した
という結果が得られています。
着床障害は、受精卵の側面と、子宮内膜の状態と両側面から検証されるべき問題で、
一重に着床障害といわれてもあきらめる必要はまったくありませんし、
この検査のみで反復不成功の方が抱える課題を解消できるわけではありませんが、
こうした正しい知識を身に着けながら、医師やパートナーに相談していくとよいでしょう。