生殖にとって、ミトコンドリアは重要な役割を担っています。
以前は、以下のような紹介をしていますので、よろしければ確認ください。
今回ご紹介する研究は、培養時の酸素濃度とミトコンドリアの関係について調査しているものです。
酸素濃度とミトコンドリアの関係
今回紹介するのは以下の論文です。
Oxygen concentration alters mitochondrial structure and function in in vitro fertilized preimplantation mouse embryos
Manuel Belli et al.,
Human Reproduction, 13 March 2019 dez011
これまで生殖補助医療を通じて800万人以上の子供たちが生まれています。
日本でも約5万人の赤ちゃんが生殖補助医療により2016年に誕生し、その比率は19人に1人ほどまでに高まっています。
生殖補助医療を語るうえで欠かせないのが、培養環境です。
その中でも酸素濃度はとても重要な項目でこれまで様々な試行錯誤がされてきました。
そして、その培養がミトコンドリアにどのような影響を与えているかを検証しました。
この研究では、5%の酸素濃度で培養する胚と20%の酸素濃度で発育する胚とで分け、
その結果を比較検討しています。
コントロール群 63個の胚
5%の酸素濃度で培養する 63個の胚
20%の酸素濃度で培養する 35個の胚
に分けて検証を行っています。
ミトコンドリアについては、
ミトコンドリア膜電位、
活性酸素種(ROS)産生、
ATPレベル、
およびミトコンドリア機能に関与する選択された遺伝子の発現を測定することによって評価しています。
その結果によると、
20%の酸素濃度下で培養した胚は、他の群と比較して、ミトコンドリアが少なく、液胞が多く、異常なミトコンドリアを有していた(P<0.05)。
胚盤胞期において、20%の酸素濃度下で培養された胚のミトコンドリアは、コントロール群よりも低いミトコンドリアDNA数が確認された。
5%の群も20%の群もコントロール群と比べると、より低いミトコンドリア膜電位、より高いROSレベルを有していた(P <0.05)。
ATPレベルは、5%O2下でのみ対照より有意に低かった。
意外にも、培地に抗酸化剤を加えても発育は改善されませんでした。
ミトコンドリアについては、まだまだ分からない部分も多くありますが、大変注目されている分野です。
酸素濃度が少なくとも培養において、きわめて重要な要素であることはわかります。
抗酸化剤を添加しても差はなかったとありますが、これは酸素濃度の方が重要な因子である可能性を示唆しており、
抗酸化剤に意味がないということではないのだと思います。
5%の酸素濃度同士で比較するなどの検証がこちらについては必要です。
以下のような紹介もしていますので参考にしてみてください。
今後さらなる研究が行われることによって、より良い培養方法の考案、難治性の不妊症への活路になることを期待します。