無精子症とは、精液中に精子が全く存在しないという現象を指します。
不妊治療を行う方では約20%に該当するといわれますが、一般男性からの比率という点では1%、
100人に1人は無精子症である
といわれます。
閉塞性無精子症(OA)とは
無精子症は、閉塞性と非閉塞性とで分類されます。
閉塞性無精子症とは、精巣内で精子が作られているにも関わらず、精子の通り道がふさがっているなどの何かしらかの障壁があり、
精液中まで精子が届かない状態を指します。
精子の通り道というのは、精巣輸出管、精巣上体管、精管、射精管を指し、これらのどこかが閉塞してしまっていることになります。
無精子症の中では20%の方が閉塞性であるといわれ、精子が発見できる可能性は90-100%ともいわれています。
実際に当院でもほとんどの場合で精子が発見されています。
治療によって精子が得られれば、妊娠する可能性は高いと期待されます。
閉塞性無精子症になる可能性が高い方は、過去に
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尿路感染
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精巣上体炎
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性行為感染症
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鼡径(そけい)ヘルニアの手術
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パイプカット手術
の既往歴がある方が多いといわれており、
現在の検査では、閉塞しているかどうかは、問診、診察所見、ホルモンデータ、精巣容積から予測します。
100%の事前診断がつかないこともあるため、生殖医療専門の泌尿器科医に診断をしてもらうことを推奨します。
治療方法
奥様の年齢が若い場合には精路再建術といわれる手術にて閉塞を修復し、自然妊娠を臨むということも考えられますが、
女性にも不妊因子が考えられる場合や、36歳以上の場合には、精巣あるいは精巣上体内から精子を採取して、
顕微授精を行うことが推奨されています。
精子の採取方法としては、精巣内精子採取というものがあります。
非閉塞性無清祥の場合には、陰嚢の皮膚を1センチほど切開し、精細管という精子をつくっている管を採取する
「Simple TESE(シンプルテセ)※」という方法もあります。
※TESEとは、「Testicular Sperm Extraction」の略
また、精子を採取した場合には、その後のライフプラン次第ではありますが、精子凍結を行っておいて、
複数回の顕微授精や2人目に備えるということも考えておく必要があります。
非閉塞性無精子症(NOA)とは
非閉塞性無精子症とは、文字通り閉塞がないのにも関わらず、無精子であるということですので、
造精機能に問題があるという状態です。無精子症の80%がこの非閉塞性無精子症とされます。
一般的な所見として、精巣が小さかったり、ホルモン値に異常がある場合が多くあります。
精子が存在する可能性は4-50%であるとされており、閉塞性無精子症に比べ難易度は高くなりますが
精液の所見には確かに精子が作られていないけれども、精細管の一部で作られている可能性などがあり、
精子自体が本当に作られていないとは限らないということです。
考えられる原因は
非閉塞性無精子症になる原因の最も多くは造精機能の問題であるため
「精索静脈瘤」がないかも疑われます。
そのほかにはクラインフェルター症候群という染色体異常が考えられます。
実は無精子症の35%前後がこのクラインフェルター症候群であるともされています。
またまれではありますが、Y遺伝子の遺伝子異常や欠損が考えられます。
治療方法
非閉塞性無精子症であり、精索静脈瘤ではないとされる場合には、治療方法は主にMD-TESEという方法がとられます。
陰嚢を3cmほど切開し、顕微鏡下で良好な精細管を選別して採取する方法です。
こうした方法をとることによって、本当に精子はいないのかを判断し、妊活はもとよりライフプランを考える必要があります。
注意しなければならない点
男性にとって、閉塞性であれ、非閉塞性であれば、相当のショックを受けることが考えられます。
そのため、男性不妊の治療を行う場合の病院選びは一層慎重に行う必要があります。
生殖医療専門医の泌尿器科医がいる病院であったり、高度生殖医療に対応できる病院、
心理的なサポートを専門で行えるカウンセラー※がいるクリニックであったり、
技術面・心理面のサポートを十分に受けられる病院を選びましょう。