妊孕性温存について考える

第7回HBOCコンソーシアムに参加して -前半-

昨日は、慈恵医大にて第7回HBOCコンソーシアムが開催されました。

昨年から参加者は2倍以上にまで増え、HBOC診療が飛躍的に進化していること、

社会の関心が高まっていることを肌で感じます。

HBOCについては、以下でも紹介しています。

参照記事

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)とは

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群 BRCA1 BRCA2による影響について

BRCA1/2遺伝子変異による早発閉経リスクについて

BRCA1/2遺伝子変異と体外受精の成績の関係

一部の内容についてご紹介できればと思います。

 

第一部:HBOC診療の壁


HBOCの診察は非常に先進的な内容であり、徹底したチーム医療が必要となるものです。

そのため、加速度的に変化している今、あらゆる面で壁が出てきていると先生方は感じられています。

今回のシンポジウムでは、

 

  • 職種間の壁

  • 患者さんとの壁

  • 社会との壁

  • 診断の壁

があるように思われました。

診断の壁というのは、がんゲノム医療を行う際には、解析とAnnotationが必要ですが、

すべての機械、検査方法で同じ結果が得られるわけではないということが紹介されていました。

 

ここでは、患者さんとの壁について紹介したいと思います。

HBOCという言葉は社会的にも認知度が低いこともあり、したがって患者さんの理解もまだ深まっていません。

その中で、検査や治療を行う必要があり、医療者と患者さんの間に情報の非対称が起こってしまうということが挙げられます。

一方で、多くの患者さんに対して、対応できる医療者の数が揃っておらず、説明するだけの十分な機会を提供できないことも危惧されます。

そのため、各医療機関はAIを導入したり、説明の方法、ツールの活用、医師に加えて看護師、カウンセラーなど他職種での関わり合いを強化して、

患者さんとの壁を埋めようとされています。

 

当院ではまだHBOC患者さんへの取り組みはありませんが、妊孕性温存については同様の取り組みを実践しています。

がん治療を行う中では、精神的にも身体的にも時間的にも経済的にも余裕がある状態ではなく、

だからこそ、患者さんにとって少しでもゆったりと情報を整理して、納得のいくInformed Choiceが欠かせません。

当院では医療事務、相談員、カウンセラー、看護師、医師が連携して一人の患者さんへかかわることによって、

このInformed Choiceを実現すべく活動しており、今回のシンポジウムの内容は非常に参考になりました。

 

HBOC診療の新たな展開


がん研究会有明病院の大野真司先生が行われた基調講演では、

HBOC診療の新たな展開について様々な紹介がされました。

 

印象的であったのは、世界のがん治療をリードする12名の専門医による

Research needs in breast cancer.

Ann Oncol. 2017 Feb 1;28(2):208-217.

Cardoso F et al.,

の紹介です。

この中では様々な内容が紹介されていますが、難治性のがんをいかに治すのかというものもあれば、

いかに患者さんへの負担を小さくしていくのか、という視点も盛り込まれており、

これをDe-escalationと呼ぶのだそうです。

乳がん治療では、このDe-escalationが近年非常に進んでいて、

例えば、乳房切除のように、年々治療の進化によって、患者への侵襲が低下していることを挙げられていました。

またOncotypeDXの導入により、余計な抗がん剤治療を行わないなどが浸透してきているという紹介もされていました。

参照記事

Oncotype(オンコタイプ)DXについて

また昨年から保険適応となったオラパリブなどの分子標的薬の話にも及びました。

こうした薬剤や技術の進化によって、患者さんへの侵襲性は顕著に低下していきます。

今後もこうした動向から目が離せませんね。

 

妊活ノート編集部

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