胚の発育環境は母体内に近いように考えられています。
これまで培養環境に関するものでは、以下のようなものも紹介しておりますので、
よろしければ参照してください。
今回ご紹介するのは、酸素濃度と胚発生の影響についての論文です。
低酸素圧と胚発生の関連性
以下について紹介します。
Influence of ultra-low oxygen (2%) tension on in-vitro human embryo development
N De Munck et al.,
Hum Reprod. 2018 Dec 20.
卵管内での酸素圧は5-7%、子宮腔内では2%と考えられています。
胚はおよそ3-4日目に子宮内腔へ到達すると考えられているため、
体外受精の胚発生プロセスにおいても、そのタイミングで酸素圧を2%と引き下げることが、
胚発生へと与える影響について検討しています。
この論文内には、2つの研究が紹介されています。
1つ目の研究では、811個の胚のうち、405個までの胚を3日目に2%O2へ、406個からの胚を5%O2へと無作為に振り分けました。
胚盤胞形成率(68.6対71.9%;P= 0.319)および5日目の良質の胚盤胞の割合(55.8%対55.2%)にも利用率(53.1対53.2%)にも差は観察されませんでした。
2つ目の研究では、1144の胚を各572ずつ無作為に二つの群に分類されました。
1つ目の研究と同様に、胚盤胞形成率(63.6%対64.7%8)、良質の胚盤胞の割合(46.9%対48.8%)または利用率(49.8%対48.1%)に関しても有意差は示されませんでした。
つまりこの研究では、低酸素圧の環境へとすることが、胚の発育ということとは直接的な関係はないということがわかりました。
体外受精の技術はとてつもない速度で進化しているとはいえ、ヒトの身体にはまだまだ解明されていない部分もあります。
今後もより良い培養環境の探求は続いていきます。