妊孕性温存について考える

タモキシフェン使用による妊孕性の低下の可能性

乳がん治療の多くは、ホルモン療法による治療が付随します。

日本では多くの場合、5-10年などで行われますが、

その際に使用される薬剤のメインがタモキシフェンと呼ばれるものです。

タモキシフェンを使用することによって、妊孕能に影響があるかどうかを検証した研究について紹介したいと思います。

 

タモキシフェン使用による妊孕能低下の可能性


以下の論文を紹介します。

Impact of tamoxifen therapy on fertility in breast cancer survivors

Lisa M. Shandley et al.,

Fertility and Sterility January 2017Volume 107, Issue 1, Pages 243–252.e5

この研究では、22〜45歳の女性乳癌生存者で、20〜35歳の間に癌が診断され、

診断後少なくとも2年であった397人の女性乳癌生存者(179名がタモキシフェン使用)を対象として検証されました。

タモキシフェンを使用した女性は、タモキシフェンを一度も服用していない乳がん患者よりもAMHが2.47倍高い(95%CI、1.08,5.65)と推定された。

タモキシフェン群では、タモキシフェン非使用群と比較して、同じ変数(リスク比1.21; 95%CI、0.84,1.73)で調整した場合、卵胞卵胞数も高い結果となった。

タモキシフェンを使用した乳がん生存者は、タモキシフェンを一度も使用しなかった生存者と比較して、乳がんの診断後に子供がいる可能性は低いですが

タモキシフェン使用者は、タモキシフェン非使用者と比較して卵巣予備力が減少しなかった

としています。

 

タモキシフェンの使用そのものが妊孕能低下に対して影響を与えるとは考えられていません。

しかし、その期間と患者さんが置かれた年齢によっては、妊娠できない治療期間の間に、

卵巣予備能が低下してしまう可能性はあります。

また、男性の要素も妊娠には関係してきますから、患者さん一人一人の状況を確認しながら、

治療計画を組んでいく必要がありますね。

 

 

妊活ノート編集部

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