最近は妊孕性温存に関しての情報が
HumanReproductionなどでも多く取り上げられています。
若年性の乳がんの中には、遺伝性のものが一部あります。
その一つがHBOCと呼ばれるもので、それに密接にかかわっているのが、
BRCA1/2遺伝子の変異です。
以前には以下で紹介しています。
BRCA1/2遺伝子変異の有無と体外受精の成績について
今回紹介するのは、以下の論文です。
BRCA1/2 gene mutations do not affect the capacity of oocytes from breast cancer candidates for fertility preservation to mature in vitro
Michaël Grynberg et al.,
Human Reproduction, dey358, https://doi.org/10.1093/humrep/dey358
BRCA遺伝子に変異があるという状態を簡単に言えば、2つある遺伝子のうちの1つが異常を起こしている状況を想像するとわかりやすいと思います。
本来は2つの遺伝子が共に異常を起こしたらがんへと発展するのですが、はじめから1つの遺伝子が異常を起こしているので、
容易にがんになってしまうということです。
この状況では、卵母細胞の老化、アポトーシスおよび減数分裂の誤りを引き起こす可能性があると考えられています。
また、卵巣刺激を伴う採卵が難しい場合には、IVMが標準的に用いられるようにもなってきています。
今回の研究では
2014年1月から2017年12月の間にIVMを用いた採卵を行った乳癌罹患者329人を対象に解析を行いました。
BRCA1/2遺伝子変異の有無(陽性/陰性)でグループを分け、52名が陽性(A群)、277名が陰性(B群)でした。
年齢層は18-40歳。左右の卵巣があり、化学療法歴のない女性に限定されています。
IVMの前に、未熟卵のカウントをして記録を取り、AMHを測定しています。
結果としては、
胞状卵胞数
A群)20.5
B群)21.7
AMH値
A群)3.6
B群)4.1
となり両群間での有意差を認めませんでした。
その後採卵を行い、各郡の差は
採卵数
A群)8.9±6.9
B群)9.9±8.1
凍結されたMⅡ卵数
A群)5.1±3.8
B群)6.1±5.1
となり、いずれの項目においても有意差を認めませんでした。
BRCA遺伝子変異の有無によって、卵母細胞などへの影響は現時点ではないものと考えられています。
しかし、BRCAのN数がまだ少なく、今後さらなる多施設での研究が必要となるとしています。
この領域はまだまだこれからの解析が必要です。
引き続き、最新情報があればUPDATEしていければと思います。