卵巣刺激を行うことが体に負担になる場合に採用される培養方法で、
未成熟卵成熟体外培養(In Vitro Maturation=IVM)という方法があるのをご存知でしょうか。
主に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で主な適応となりますが、適応が広がりつつあり、今注目を集めています。
未成熟卵体外培養(IVM)とは
通常の体外受精では卵胞の直径が20ミリ前後の時期に採卵を行い、即日媒精し、受精卵を培養するものですが、
このIVMという方法では卵胞の大きさが7mmほどの小さなうちに採卵をし、体外で24時間培養して成熟させた後に、体外受精のステップへと移ります。
以下の1~3のすべてを満たす場合をPCOSと定義されています。
(日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会、2007)
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月経異常
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多嚢胞卵巣(片方の10mm未満の胞状卵胞数12個以上)
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血中男性ホルモン高値またはLH基礎値高値かつFSH基礎値正常値
IVMでは、採取した卵子は未成熟なため、特殊な培養液を使用して体外で成熟させたうえで、
精子と授精させ、得られた胚を子宮腔内に移植します。
多くの場合子宮内膜が薄くなっていることもあるため、胚を凍結して別の周期に胚移植を行います。
IVMは無刺激で行うため、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)をおこす可能性がありません。
メリットは、このようにOHSSになる可能性がないことに加え、
卵巣刺激を行うことでの身体への負担や経済的な負担、時間的な負担がなくなることだといわれています。
特に仕事との両立などで悩まれている人にとっても良い方法かもしれません。
そのほか未成熟卵体外培養(IVM)の特徴や注意点
IVMでは、成熟卵に発育したことを確認して、「顕微授精」を行います。
また、未熟な状態の状態の卵を培養するため、すべてが成熟卵になるわけではなく(おおよそ50%といわれます)
成功率という意味では、通常の体外受精、顕微授精と比べて低くなるということを念頭に置かなければいけません。
また、この技術には培養士と言われる技術者の高い技術が求められるため、どこの施設でもできるというものではありません。
卵巣状態に問題がある方でも十分な採卵ができるように、様々な技術が研鑽されています。
正しい知識をもち、医師とよく相談の上、治療計画を組んでいきましょう。