これまでPGT-A(着床前スクリーニング)については、様々に紹介をしています。
日本では現在臨床研究中ですが、海外では標準的に行われており、
それに伴う遺伝的なカウンセリングも急増しているようです。
遺伝子に関することは、それがわかることでのメリットはとてつもなく大きいものではありますが、
メリットのみならず、デメリットもあります。
まさにこのモザイクという概念については、技術が高度になったことで、生まれてきた隙間のような感じかもしれませんね。
実際に海外の施設での遺伝カウンセリング後の患者さんの行動について紹介しているものがありますので、紹介したいと思います。
モザイク胚を有する患者さんが遺伝カウンセリング後に何をするか
今回紹介するのは以下の論文です。
What are patients doing with their mosaic embryos? Decision making after genetic counseling
Andria G. Besser et al., Fertility and Sterility
今回はニューヨークからの報告で、
対象となったのは、モザイク胚を有するが、正倍数体の胚を有さない98人の患者です。
そのためこの患者さんたちはモザイク – 胚移植(MET)について議論する遺伝カウンセリングを行いました。
その後の行動について解析したものです。
遺伝カウンセリングによって、モザイク胚の説明を受けた患者さんの次のアクションは以下のようにわかれました。
・モザイク胚を移植する:29.6%
・追加で治療する(自分卵子orドナー卵子):41.8%
・胚を保存したまま追加のアクションはなし:20.5%
・追加の治療をせず、モザイク胚を廃棄した:6.1%
・胚を別の施設へ移送した:2.0%
その後の転帰(妊娠率)を追跡すると、
追加の治療を行った方:51.2%
モザイク胚を移植した方:27.6%
となり、
最終的には32.7%の方がモザイク胚の移植を行いました。
そのうち妊娠後に羊水検査を受けたのは、54.5%でした。
モザイクとなっても多くの方が移植を望まれることがわかりますし、
現時点ではモザイク胚の扱いについて統一的な見解はありません。
アメリカは治療費もとても高いため、妊娠率に加えて、治療効率という点もよく議論になりますが、
その点についてもまだこれからのことではないかと思います。
様々なところで早くPGT-Aが開始されればよいという話がされますが、
日本は諸外国に比べて、高齢の方の自己卵での治療が突出して多い国ですので、
こうした遺伝的フォローなどの体制がしっかりしていることは必須だと思います。