International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology(ICMART)が
2011年時点での世界の生殖補助医療のデータをまとめて報告しています。
世界の生殖補助医療(ART)の統計とそこから見える日本の特徴
参照:International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology: world report on assisted reproductive technology, 2011
ここでは中国を除くデータが様々に記載されており、全世界のおよそ3分の2のデータが集計されています。
2011年の1年間で計1,115,272サイクルが実施されていると報告されています。
凍結融解胚移植の比率は、13.1%から13.8%へと上昇しており
ドナーではなくARTを受けた40歳以上の女性の割合は、2010年の23.2%から2011年には24.0%に増加しています。
ICSIを行う比率は、67.4%から66.5%へと低下しており、移植する胚の個数は1.95個から1.91個へと減少しています。
単一胚移植は51.8%であり、双胎率は11.1、品胎率は0.4%となりました。
世界的にみれば、2010年から2011年にかけての大きな傾向として、
ART(生殖補助医療)の利用者は増え、安全性は増し、有効性も高まっているというのが主旨のようです。
そのデータと日本を比べるとどうなのか、という点をいくつか紹介したいと思います。
日本に次いで周期数の多いアメリカと比較したいと思います。
①周期数は世界一
日本では173895周期が2011年に行われています。
アメリカの91893周期と比べておよそ2倍と、人口から考えれば、
非常に多い比率と言えます。
②妊娠率はダントツで低い
日本の妊娠率は11.4%、アメリカの妊娠率は40%を超えています。
出産率まで掘り下げていくと日本は7.9%、アメリカは33.4%です。
③単一胚移植は徹底されている
世界のデータでは単一胚移植は50%超ということでしたが、
日本では90%を超える水準で行われているため、結果としての多胎率は3%前後となります。
母子ともに安全性の高い治療が行われていると考えられます。
④PGT・ドナーは実施していない
世界ではPGTを行う、あるいは高齢患者の場合ドナーでの治療が通常です。
それに対して、日本では、PGT-Aがまだ臨床研究中であり、ドナーも不可能となると、
上述の妊娠率の低さなどにもつながることと思います。
あくまでも技術的な面での話です。(PGTがよいか、ドナーはいいのか、という問題ではありません)
こうした特徴を考えると、日本のARTの特徴は
①世界のスタンダードを徹底した安全なARTが行われている
②妊娠率は世界的にみてもダントツ低い
③高齢者の比率が高い
ということがあげられ、安全性の徹底度は世界でも群を抜いていると言えるでしょう。
一方で、妊娠率については世界で最も低いですが、必ずしも高齢化だけが原因とは言えません。
世界標準の調節刺激法などを行うことで、これからもっと変わっていくものと思います。
また、高齢者の比率が高いということは、治療が不成功に終わることも抗いようがなく、
そうした意味では、第三者の生殖医療だけでなく、特別養子縁組や里親里子などの多様性を持たせた
日本ならではの選択肢が今後増えていけばよいのかもしれません。
日本の中だけにいれば、どんな病院がいい病院か、いい治療か、がわからなくなってしまいます。
世界から見た日本を定期的に紹介していければと思います。