不妊治療のゴールは、言うまでもなく、妊娠・出産です。
妊娠成立(胎嚢確認)というところまでで見ていくと、
当院では、胚に起因する要因が6割超、子宮内膜環境に起因する要因が4割弱、と説明をしています。
今回ご紹介する論文は、アメリカでの研究結果をまとめており、
不妊の女性とそうでない女性における「出産」への影響についてまとめたものです。
不妊女性の子宮環境が出産に与える影響について
今回のご紹介するのは、以下の論文です。
How much does the uterus matter? Perinatal outcomes are improved when donor oocyte embryos are transferred to gestational carriers compared to intended parent recipients
Thalia R. Segal et al.,
Fertil Steril 2018; 888–895
今回の研究はアメリカならではの研究で、
ドナー卵子を用いた体外受精の成績を、代理母で行った周期と不妊女性で行った周期とで比較するというものです。
代理母は出産経験がある方です。
代理母は1,927周期、不妊女性は18,317周期でした。
(日本では絶対にできない研究ですね)
ドナーの卵子を使用するということは、受精卵側の要因を排除した環境での差を見ることができますので、
出産経験がある方と不妊の女性との間の子宮内の環境の変化が出産に対して影響を与えるか、
ということについて検証したものです。
結果によると、(代理母群:不妊女性群)
妊娠率 65.2%:56.3%
出産率 57.1%:46.4%
流産率 7.7%:9.3%
となりました。
不妊女性の群の方が、妊娠率が低く、流産率が高いため、出産率は低い結果となっています。
年齢別での解析も行われており。、
代理母群は35歳未満から45歳、グラフ上では48-50歳の方でも出産率の低下が見られなかったのに対して、
不妊女性は緩やかではあるものの、加齢と共に出産率が低下する傾向が見られました。
また、早産や出生時の体重でも有意な差がみられています。
37週前での出産 17.5%:25.4%
2500g未満の出生 6.4%:12.1%
という結果が得られています。
以前、フローラと早産の関係でも紹介をしていますが、
子宮内の環境については、これから解析がされていくだろうと言われています。
これからの動向にもさらに注目が集まりますね。