日本でも徐々に卵巣予備能が正常であれば、調節卵巣刺激を行うというのが、
セオリーになってきているのでしょうか。
先日公開した以下の記事は非常に多くの閲覧がありました。
今回は、日本で行われた研究で、黄体ホルモン製剤を活用した卵巣刺激について紹介したいと思います。
従来の卵巣刺激における問題点は
従来、卵巣予備能が正常である場合、当院の卵巣刺激法の第一選択はアンタゴニスト法です。
卵巣刺激を行う上での留意点として、
卵巣予備能から考えたときに最適な卵子数が得られるかどうか、
副作用をできるだけ抑えられるか(安心・安全)
早発排卵を防げるか
という点に注意して行われます。
最後の早発排卵というのはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、
早発LHサージとも呼ばれます。
調節卵巣刺激の第一選択であるアンタゴニスト法は、
即効性があり、視床下部下垂体への作用が可逆的であるなどの利点がある一方で
薬剤が高額であること、
注射製剤しかないこと、
適切な使用方法でも2~10%に早発排卵を生じてしまう
という欠点を認めていました。
今回紹介させていただく研究は、先日の受精着床学会でも紹介された北海道の不妊治療施設からの報告を引用します。
課題名:Dydrogesterone(デュファストン)内服を用いた新しい調節卵巣刺激法
この研究では、
2016年7月から2017年4月の間にIVF/ICSIを施行した299症例
(145例がデュファストン法、155例がアンタゴニスト法)
を比較検討したものです。
これによると、
採卵数 10.8±6.7 vs. 10.7±5.3
受精率 74.1% vs. 77.3%
有効胚利用率 65.5% vs. 68.1%
採卵達成率は両群共に98.5%以上
と2群間に差はなく
最終的な
臨床的妊娠率 57.4% vs. 49.3%
初期流産率 20.0% vs. 17.4%
継続妊娠率 45.9% vs. 40.7%
においても差を認めなかったという結果となり、
結論として
内服薬のみで早発LHサージを抑制できるこの卵巣刺激法は利便性が高く、今後に期待が持てるとしています。
当院ではルトラールなどの黄体ホルモン製剤を活用して、
同様に早発LHサージを抑えながら、卵巣刺激を行う方法を実施しています。
詳しくはドクターまでお問い合わせください。