日本にはこれまで
卵巣刺激をすることは自然じゃない=よくない
という考え方が根強く存在しています。
自然周期には自然周期ならではのメリットがありますが、
世界標準はあくまでも調節卵巣刺激です。
今回は現時点では最も多くの症例を解析した調節卵巣刺激についての研究です。
卵巣刺激を行い、得られる卵子を最大化するのがセオリー
今回の研究は、約15,000症例を対象に行われた多施設合同研究です。
Cumulative live birth rates according to the number of oocytes retrieved after the first ovarian stimulation for in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection: a multicenter multinational analysis including ∼15,000 women.
Fertil Steril. 2018 Sep;110(4):661-670
Polyzos NP et al.,
この研究では、18歳から45歳までの患者で初回の採卵を調節卵巣刺激(主にアンタゴニスト法)で行った症例を対象に、
得られた胚がすべて使い切られるまでか、出産されるまで、少なくとも2年間以上の期間追跡的に調査をしたものです。
主な結果として、新鮮胚移植、凍結融解胚移植を問わず、得られた卵子の数が増えていくにつれて、累積妊娠率が高まるという結果が得られました。
グラフとして妊娠率は、1-7個までが順々に増加し、7-20個までの間はほぼ横ばい、新鮮胚移植の場合、20個以上で低下しましたが、
これは20個以上の卵子を得られた方は主にその後全胚凍結、凍結融解胚移植に進むためです。
こうした結果を踏まえて言えることは、出産までを確認した研究である以上、
調節卵巣刺激を行う=自然じゃない=よくない
ということは言えないということです。
患者さんが一番に求めているゴールは妊娠・出産です。
その中で、より安全で安心な医療ではないでしょうか。
治療方法にフォーカスするのではなく、患者さんにフォーカスした治療を
提供していければと思います。