肥満と不妊については様々な関係があることがすでに知られています。
海外では、不妊原因の大きな一つであるPCOSは肥満の方に多くみられますし、
排卵障害なども肥満の方では起こりやすく、男性でも精子のDNA損傷が起こりやすいなどの
報告が数多くなされています。
一方で、体外受精の成績については、思いのほか関係性がこれまで指摘されていません。
今回の栄養特集から、その一つで挙げられている肥満と体外受精の成績の関係について紹介したいと思います。
肥満であっても体外受精の成績は変わらない
Successful weight loss interventions before in vitro fertilization:fat chance?
Fertil Steril 2018; 110: 58
Robert J. Norman et al.,
Fat chance、とはかなり思い切ったタイトルだと思いますが、
今回の論文では、肥満と体外受精の成績の関係を調べたものです。
これまで多くのケースにおいては、
「肥満であるなら治療しない」
というスタンスの医療機関も多かったと指摘しており、
痩せてから、ということがハードルになってしまって治療できなかったり、
ダイエットに費やした時間のせいで、助成金を受け取れなくなったり、
卵子の質が低下してしまっていたり(加齢)という問題があることを指摘しています。
これまでの研究で分かっていることとして、
肥満の女性群を2つに分け、減量する群と減量しない群とでわけてその後の治療結果を見たときに、
自然妊娠においてはいずれの研究でも、減量した群において有意に高い結果となったことが記されています。
一方で、不妊治療によって介入した場合、両群間にはあまり差がないことが知られています。
肥満であることは間違いなく不健康であり、不妊症のリスクも高まります。
この筆者は、だからこそ、早期に体外受精などで介入することも必要ではないか、と言っているように思われます。
肥満が体外受精に対して与える影響は限定的としつつも、最終的には出産そして生まれてくるお子さんのことを考慮しての
治療ですから、そこは医師によっても意見が分かれるでしょうし、今後も議論は必要です。
現時点では、実は体外受精(による妊娠)と肥満の間には関係はほとんどない、ということになるのではないでしょうか。