喫煙についての最新のアメリカ生殖医学会の見解が出ていますので、
ご紹介します。
Smoking and infertility: a committee opinion
Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine
アメリカでは、生殖年齢の女性の21%、男性の22%が喫煙していると言われています。
日本では、JT社の調査による、平成30年のデータでは、
20歳代の男性:23.3%
20歳代の女性:6.6%
30歳代の男性:33.1%
30歳代の女性:11.1%
という結果が出ています。
女性については、日本の方が喫煙している方は少ないということになりますね。
さて、話をアメリカ生殖医学会のコメントに戻しますが、
喫煙については有害であるという認識はされているものの、
不妊との関係性については、まだ浸透しきっていないと考えられています。
肺癌 99
呼吸器疾患 99
心臓病 96
流産 39
骨粗鬆症 30
子宮外妊娠 27
不妊 22
早期閉経 17
大病に対してのリスクはイメージできてはいますが、
不妊との関係性については、やはりまだ理解不足と言えるのではないでしょうか。
喫煙と不妊に関するアメリカ生殖医学会の最新見解
アメリカで行われた大規模なメタアナリシスでは、
10,928人の曝露された女性および19,179人の未曝露の女性のデータを比較し、
喫煙女性の不妊リスクは、非喫煙女性と比べて2.27倍ということでした。
日本でも仮に同じだと仮定した場合、6組に1組のカップルが不妊症で悩んでいる状況で、
喫煙が加われば、そのリスクはさらに高まり、とてつもない頻度になりますね。
また、喫煙については、更年期障害や早発閉経との関係も指摘されており、
上述のデータでは、喫煙者の方が非喫煙者に比べて、1-4年早く更年期障害が発来したという結果があります。
これは、喫煙によって、卵胞の枯渇が加速する可能性があることを示唆しています。
日本でも喫煙の研究では、動脈硬化などとの関係性を調べているものがありますが
そこには酸化ストレスが多分に関わっていると考えられています。
酸化ストレスによる卵質の低下なども影響しうると考えられます。
また同様の解析で、喫煙が流産リスクを1.8倍増加させることも研究により明らかになっています。
男性についても、精子の密度、運動性において、喫煙男性は非喫煙男性と比べて低下することや、
さらには、母親が1日10本以上の喫煙をする男児では精液所見が悪かったというデータがフィンランドなどで得られています。
このように、妊娠ということと関連付けて言えば、たばこには百害あって一利なし、と言えます。
また最近になって、電子タバコならいいんでしょ、というご意見もちらほら拝見しますが、
こちらについては、まだ研究が出てきている最中であり、専門外の私たちにはまだ判断ができていませんが、
これまで発表されているデータは、タバコ社からの一方的なものが多い印象であり、
最近の報告では、電子タバコにも発がん性物質が発見されたり、
使用者が使用ルールを順守しきれないことによる想定外の有害物質の発生なども危惧されています。
もともとはタバコですから、吸ったほうが体に良い、妊娠に良いということにはなりません。
禁煙治療も不妊治療の上では必要なことだと言えるでしょう。