今日はスペインからドクターの一団が当院を訪れ、
ディスカッションや勉強会を行いました。
スペインは生殖補助医療(ART)の領域では成長目覚ましく、
現在では世界第3位の治療周期数があると考えられています。
ただ、宗教観などの差も大きく、様々なディスカッションが交わされました。
スペインと日本の比較から見える、日本の生殖補助医療の特徴
今回様々なディスカッションを行いましたが、
そうしたディスカッションの中で改めて日本の特徴が見えるように思いますので、
ここで少し記載をしたいと思います。
①とにかくクリニック数が多いこと
スペインドクターの中での最大の驚きの一つがこの点でした。
人口に対してのクリニックの多さです。
また、このクリニックの中で、治療件数に大きな差があることも患者さんにとっては、
大きな誤解を招く恐れがあることもあります。
参考までに記載をしますが、日本のクリニックのおよそ半数は年間に100周期行わないクリニックです。
100周期ということは、月に8-9周期、25日診察しているとすれば、3日に1回治療をするかしないかです。
一方で上位15%のクリニックで日本全体の85%の周期をカバーしています。
そうしたクリニックでは日に5-10周期はふつうに行われています。
そうした点が正しく伝わらないと、患者さんがクリニックに来たまでは良くても、
その方にとってベストな治療が受けられない可能性があります。
クリニック選びは難しく、そしてとても重要な成功の要素です。
②単一胚移植が徹底されていること
世界ではいまだに、2個以上の胚盤胞を移植する国が多くあるため、ARTによる多胎妊娠率は
優に2桁を超えます。
日本ではその後の母児の安全性も鑑みて、徹底した単一胚移植が行われており、
世界もこれに倣う傾向にありますから、安全性の観点では日本はTOPクラスだと思います。
③男性不妊は日本が強い
海外では、男性不妊にせよ、女性の不妊にせよ、その選択肢にドナー(提供)があります。
そのため、難しいOPEをする前に、ドナー提供へと移るケースも多いようです。
男性不妊の手術は日本の方が多く行われているようです。
④日本はARTの成績が悪い
日本では、世界で一番のART周期数を誇りながら、
生産率は世界で最も低い水準にあります。
その理由は、世界に比べて患者さんが高齢であること
単一胚移植が徹底されていることなどが挙げられますが、
もう一つの一因に、卵巣刺激法の差があると考えられています。
世界に比べて自然周期、低刺激周期が多いことがその一つです。
これが採卵周期あたりの生産率が低いことにつながっていると言われています。
ただ、自然周期や低刺激周期が良くないということではなく、
個々人に合わせた卵巣刺激であるべきですが、世界的にみればスタンダードな選択肢ではないということだと思います。