患者さんからセミナーなどでよく寄せられる質問に
「AMHが高くないのですが、高刺激周期なのでしょうか」
「こちらで治療する人の全員が全胚凍結なのでしょうか」
という質問を多くいただきます。
答えは
「NO」
なのですが、そうした根拠の部分を今回はご紹介できればと思います。
全胚凍結が有効な人は全員ではない
まず研究について紹介したいと思います。
Freezing of all embryos in in vitro fertilization is beneficial in high responders, but not intermediate and low responders: an analysis of 82,935 cycles from the Society for Assisted Reproductive Technology registry
Fertil Steril. 2018 Aug 20. pii: S0015-0282(18)30425-4
Acharya KS et al.,
上記の研究は、合計82,935周期を解析し、妊娠率・出産率について追跡的に調べたコホート研究です。
この研究で得られたこととして、
卵子が15個以上得られている方については、
全胚凍結後の凍結融解胚移植の方が妊娠率が高いという結果が得られました。
(凍結胚移植:新鮮胚移植=61.5%:57.4%)
一方で卵子の得られた数が中程度(6-14個)の方は
44.2:49.6%で新鮮胚移植の方が高く、
卵子の得られた数が少なかった方についても、
33.2%:15.9%と新鮮胚移植の方が高い結果となりました。
また、総じて、すべての方に共通していたのが、流産率については、
凍結胚移植の方が、若干ではありますが高い結果も出ています。
あくまでもこの研究は後から結果を振り返る後方視的なスタイルのものであるため、
ここでどちらの方法が良いかを結論付けることはできませんが、
少なからず現時点で言えることは、
その人の身体に最適な卵巣刺激法を行い、
得られた卵子の数や状態に応じて移植方法を検討していく必要があるということ。
また、世界的なスタンダードな方法としては、やはり卵子の数が得られる場合には、
高刺激を行い、全胚凍結、その後融解胚移植を行うのがよいということ
ではないかと思います。
治療方法ありきで患者さんがいるわけではなく、患者さんに応じた治療を提供できるように、
努めていきたいと思います。