子宮外妊娠とは、
子宮体部ではない場所に妊娠すること
を指します。
ただし、子宮頚管や、子宮の端から卵管の間(卵管角部)も正常経過とはならず、
これらも含めて、正確には異所性妊娠といわれます。
子宮外妊娠について解説していきます。
子宮外妊娠とは?どんな症状なのか?
子宮外妊娠とは、文字通り子宮ではない場所に受精卵が着床してしまい、
その結果として、成長する胎児を支えるスペースがなく、また栄養補給などの経路も整わないことから、
妊娠継続が不可能となってしまうことです。
自然妊娠の場合、全ての妊娠に対しておおよそ1%の発生率とされます。
子宮外妊娠では、妊娠したときと同じようにホルモンが分泌され始めるので、妊娠検査薬を使うと陽性反応が現れます。
そのため、身体的にはもちろんですが、精神的にもダメージの大きな症状といわれています。
子宮外の場所での妊娠ということですが、多くのケースで、卵管に着床することが確認されています。
子宮外妊娠の原因とは?
子宮外妊娠の原因は、
「卵管」
「子宮」
「受精卵の輸送」
のどこかに原因があると考えられています。
卵管
卵管に起因する問題は、卵管が癒着を起こしていることで、受精卵が子宮内膜まで到達しないという状況です。
過去の性感染症や子宮内膜症が疑われます。
子宮の問題
子宮の問題は、過去に人工中絶経験があり、その際の内膜の修復がうまくいっていない場合や
炎症や、避妊具(IUD)などが異物となってしまうなどが原因で子宮環境に影響を与えていると考えられます。
その他、子宮筋腫、子宮奇形、子宮後屈などが関与している可能性もあります。
受精卵の輸送時や原因不明のことも
受精卵が卵管に入ろうとする際に誤って卵管采の方に飛び出してしまい、
卵巣や腹膜の方へ向かってしまうことがあるともいわれます。
そのほかにも、これらの症状がないにも関わらず、子宮外妊娠となることもあります。
子宮外妊娠の兆候や症状は?
子宮外妊娠かどうかは妊娠6週目までにはわかるとされ、
正常妊娠であれば子宮内に赤ちゃんの元になる細胞として「胎嚢」が確認できるところが、
この胎嚢が見えない場合に子宮外妊娠の可能性が出てきます。
子宮外妊娠は予防できないトラブルですが、兆候として一般的に言われるものは大きく3つあります。
-
下腹部痛
-
出血
-
ピンク色のおりもの
しかし、仮にピンクのおりもの(出血が混じっている)という状況であるからと言って、
確実に子宮外妊娠と断定できるわけではありません。
そのため予防できるトラブルではないとされますが、早期発見が安全のために最も大切とされますので、
妊娠したかもという状況になり、このような兆候を感じたら、迷わずに医師に相談することを進めます。
不妊治療と子宮外妊娠
ここでは、不妊治療と関連して語られる子宮外妊娠について解説します。
不妊治療を行うことで、子宮外妊娠が増えるということが一部ではいわれますが、
確かにそういった側面があり、世界的にもレポートされています。
参考論文:Ectopic pregnancy after in vitro fertilization: differences between fresh and frozen-thawed cycles.
Fertil Steril, 2015,Jul,104, 110-118.
この論文は、アメリカ生殖医学会の下部組織で、SARTというアメリカ全土で行われる体外受精関連の治療成績をまとめて報告する組織から出ているため、
サンプル数も非常に多く、信頼できるデータではないかと思われます。
結論としては、
子宮外妊娠の発生について、凍結融解胚移植は新鮮胚移植に比べ「1/3」と低くなる
というものです。
具体的に、対象としては2008年から2011年のデータで、100,000以上の周期のデータを用いて、
71,906周期は新鮮胚移植による妊娠で、31,164周期は凍結融解胚移植による妊娠でした。
全妊娠中1.38%が、いわゆる異所性妊娠だったとされており、
新鮮胚移植と融解胚移植で比較すると、融解胚移植では、約65%異所性妊娠の発生率が低くなっています。
なぜ新鮮胚移植の方が異所性妊娠率が高く、凍結融解胚移植では低いのか?
最大の違いは「卵巣刺激」をしているかどうかで、融解胚移植では卵巣刺激を行わないため、
ホルモン的には生理的な状態に近いことです。
新鮮胚移植も凍結融解胚移植も、採卵時には多くの場合、卵巣刺激を行い、複数の卵胞を育てようとします。
通常は月一つの排卵を複数個育てるとなれば、当然ホルモン値等にも一定の影響が出ますし、
その結果として子宮内膜のコンディションにも差が出るといわれます。
以前から胚盤胞を移植した場合には、新鮮周期よりも融解胚移植で妊娠率が高いことは知られています。
卵巣刺激をすることで子宮内膜の環境が変化し、着床が起きづらくなることが原因と考えられていましたが、
同様な理由で、子宮内膜で着床せずに、卵管などの本来着床すべきではない場所に妊娠してしまうということのようです。
そのため、最近ではもっぱら凍結融解胚移植を主に行う医療機関が増えています。
子宮外妊娠はたったの1%の発生率とはいえ、発生し放っておけば命にかかわる可能性さえあります。
医師と相談をしながら、治療方針を決めていくことが推奨されます。
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