妊孕性温存の治療をしているとよく訪れられる疾患では、
乳がん、子宮頸がんがあります。
乳がんについては、これまで以下で紹介をしております。
論文紹介:乳がん患者における妊孕性温存の有効性について
今回は子宮頸がんについて紹介したいと思います。
子宮頸がん患者は年々増加中
国立がん研究センターの情報によれば、
子宮・子宮頸がんは年々増加しており、それに伴い死亡者も増加しています。
厚生労働省のデータによれば、
世界では約2分に1人が死亡しており、
日本では7分に1人が死亡していると報告されています。
とりわけ、若年層での罹患が増えていることが懸念されます。
子宮頚部がんの妊孕性温存については以下で紹介しておりますので、
確認いただければと思います。
乳がんにせよ子宮頸がんにせよ、大切なポイントは早期発見と予防です。
特に、この予防について、子宮頚部がんについては、HPVワクチンの重要性が近年世界では叫ばれています。
HPV(ヒトパピローマ)ワクチンとは
HPVが子宮頚部に感染して進行すると、子宮頸がんになることがあります。
約99%は知らない間にかかっているとされ、皮膚感染もすると言われています。
(ほとんどの方はしらないうちに感染し、しらないうちに消える)
特に、20代、30代の若年者の感染は性行為を通じてのものが多く、全体の約4%程の方はがんへと進行してしまうと考えられています。
この性行為を通じて感染するHPVは16型、18型といわれており、進行度が早いことで知られています。
通常、子宮頸がんの早期発見には定期健診というのが一般的ではありますが、
これでは遅きに失するということもあるようです。
そのため、注目されているのがHPVワクチンです。
日本では2013年に有害事象が報告され、それ以降積極的に摂取するように勧奨されていないようですが、
世界ではその有効性を改めて報告する研究が公表されています。
Prophylactic vaccination against human papillomaviruses to prevent cervical cancer and its precursors.
Cochrane Database Syst Rev. 2018 May 9;5
Arbyn M et al.,
この研究では、23の論文を横断的に解析し、該当する患者は73,428名いました。
ワクチンの安全性は、23の研究において6ヶ月から7年の期間にわたって評価されました。
ワクチンにまつわる研究であるため、研究費用はワクチン製造業者によって資金提供されたものでしたが、
バイアスは低いと判定されています。
15〜26歳の方では、HPVワクチン摂取によりCIN2〜CIN3と上皮内腺癌の罹患率は有意に低下しました。
つまり、この論文での結論として、
思春期の少女や15歳から26歳までの若い女性では、HPVワクチンが子宮頸部前癌に対して保護されているという確かな証拠がある。
としています。
世界標準はこのように変化してきているようです。
日本でもより多くの人が安全にこうしたワクチンを受け、一人でも罹患する人自体が少なくなることが、
一番の妊孕性温存なのかもしれませんね。