日本では現在パイロットスタディ中のPGT-A(Preimplantation Genetic Testing-Aneuploidy)に関する情報です。
PGT-Aは、染色体の数的異常を調べる検査です。
PGT-Aの役割を再確認
染色体の以上にはいくつかの種類がありますが、
数的異常は、誤解を恐れずに言えば、だれにでも起こるものであり、
近年長らく叫ばれ続けている、年齢による妊娠する力の低下とは、
卵子や精子の力が衰え、この数的な異常が多発することによると考えられています。
そうした数的異常な胚を移植したとしても、妊娠することはなく、着床しないか、
流産することにつながると考えられていることから、それを回避するために欧米諸国では積極的に行われています。
PGT-Aの効果
アメリカの研究を紹介します。
Pregnancy outcomes from more than 1,800 in vitro fertilization cycles with the use of 24-chromosome single-nucleotide polymorphism-based preimplantation genetic testing for aneuploidy.
Fertil Steril. 2018 Jul 1;110(1):113-121
Simon AL et al.,
この論文では、
2010年10月から2013年8月までアメリカの不妊治療施設で、
採卵をし、かつ、PGT-Aを受けた20-46歳の患者さんの1800以上の周期を対象として、
後方視的に解析をしました。
各年代別の妊娠率や正常胚の率などを、ドナーエッグ(若く、異常のない卵子)と比較検討しました。
その中で明らかとなっているデータは
・年齢の上昇によって、異常(Aneuploid)の比率は高まる
35歳未満やエッグドナーでは、26%前後であるのに対して、
35-37歳では37.8%
38-40歳で54.5%
41-42歳で72.4%
・着床率・出生率は正常胚を移植すると、年齢による影響は出ない
・取れた卵子当たりの妊娠率は加齢により低下していく
・正常胚移植後の流産率は年齢による影響を受けない
といった結果が示されています。
その他、余談ではありますが、2個胚移植の比率がとても高いことには相変わらず驚きました。
このデータでは35歳未満の方で言うと、およそ30%に近い方が2個胚移植を行っています。
日本では、ガイドラインがきっちり守られているので、この点、とても安全な医療体制なのだなとしみじみ感じました。
このPGT-Aの結果自体は、やはり従来の見解を引き継ぐものであり、
忘れてはいけない点としては
あくまでも不妊症と年齢の関係はかなり密接なものであり、PGT-Aをすれば年齢によらず妊娠率が高まるというわけではない
という点かと思います。(採卵あたりの妊娠率がとても重要)
染色体が異常な胚を戻してしまうことによる流産の発生は心理的にも、治療のリカバリーに費やす時間という意味でも、
とても損失が大きいもので、流産率の低下が現時点では最も高い効果と考えられているようです。
また昨今取り沙汰されている、モザイク胚についても、ここでは明らかになっていません。
まだまだ完全な検査とは言えませんが、事実として、良好な胚を移植すれば着床率は高まり、妊娠率・出産率も高まること。
そのため、以下に良好胚盤胞を数多く得られるか、というのが治療において重要であるということかと思います。