当院でも非常にお問合せの多い、慢性子宮内膜炎に関しての最新のメタ解析結果を紹介したいと思います。
これまでの慢性子宮内膜炎に関する記事は以下から確認くださいませ。
慢性子宮内膜炎の治療の有用性は?
慢性子宮内膜炎の治療については、様々な意見があり、見解が分かれています。
今回の研究は多国間でのメタ解析を行ったものです。
Effects of chronic endometritis therapy on in vitro fertilization outcome in women with repeated implantation failure: a systematic review and meta-analysis
Amerigo Vitagliano et al.,
Fertil Steril July 1, 2018Volume 110, Issue 1, Pages 103–112.e1
今回の解析は5つの研究を対象に行われました。日本もこの研究には参加しています。
合計796名の反復着床不全で慢性子宮内膜炎の患者さんを対象に、
慢性子宮内膜炎治療後の妊娠成績を比較したものです。
主要な評価指標は、
臨床妊娠率、妊娠継続率、着床率、出産率、流産率が設定されました。
この研究では、
抗生剤を投与して慢性子宮内膜炎が根治していた場合、
妊娠継続率が6.81倍
臨床妊娠率が4.02倍
着床率が3.24倍
という結果となりました。
以前にも紹介している通り、抗生剤の投与によって症状が根治している場合には、
やはり着床率などの数値が大幅に改善され、有用性が示唆されます。
一方で、抗生剤を投与されば治るというほど簡単なものではなく、
治癒の確認をせず、慢性子宮内膜炎が持続していれば、治療効率は一向に改善しないことや、
この治療と流産率とは関係がなさそうであることが、この解析では示唆されています。
また、この研究では体外受精の患者さんに絞って解析されているので、
一般不妊治療の方などに対しての有効性は定かではありません。
慢性子宮内膜炎の検査は、現在当院での標準的な方法としては、CD138免疫染色によるものであり、一定の侵襲があります。
現在、高輪院で先行している方法ではEndomeTRIOという方法がありますが、この方法ではより簡便に行うことができると考えられています。
慢性子宮内膜炎はまだまだ不明な部分もあるものの、妊娠、特に着床に対して与えている影響は少なくないと考えられます。
良好な胚を2度以上移植してもうまくいかないという場合には、一度検査してみるのもよいと思います。