着床不全は最近盛んに研究が進んでいます。
その中でも、重要なのは子宮側の要因を探すことです。
着床に影響を及ぼす可能性があるのは、受精卵側と母体側(子宮、子宮内膜側)にあるとされておりますが、
日本では厳密な意味での着床前のスクリーニングは臨床試験中です。
受精卵側の要素を見るには、日本において最も現実的で効果的な対策はタイムラプスによる培養観察かもしれません。
いずれにしても、日本においては、母体側の要因を調べることが様々に求められます
弓状子宮は着床に影響しない
子宮奇形の頻度は不妊症患者の8%程と考えられています。
子宮奇形の有無については、子宮卵管造影検査や子宮鏡検査にて検査します。
子宮奇形の主な種類としては、
弓状子宮
中隔子宮
があり、合計7種類の分類がありますが、
最も多いものは弓状子宮といわれます。
では、この弓状子宮が着床・妊娠に対して、影響を与えるのかどうか、
という点について研究した論文を紹介したいと思います。
Arcuate uterus: is there an impact on in vitro fertilization outcomes after euploid embryo transfer?
Fertility and Sterility, 2018:109;638–643.
Eric S. Surrey et al.,
この研究では、アメリカの生殖補助医療施設で、受精卵の染色体検査を行い、異常がない胚を移植した方々432人461周期を対象として、データの解析を行いました。
(可能な限り受精卵側の要因がない状況での検証)
第1群(弓状子宮)78人、83移植
第2群(正常子宮)354人、378移植
着床率:①63.7%、②65.4%
生産率:①68.67%1、②67.8%
化学的妊娠:①8.4%、②7.65%
流産:①4.8%、②4.27%
上記の結果、2群間に差は認められず、弓状子宮は妊娠に影響を与えない、と考えられました。
これまで2016年のアメリカ生殖医学会(ASRM)のガイドラインでは弓状子宮は妊孕性に影響を及ぼさないとされているが、
これまでに染色体正常胚を用いての弓状子宮の妊娠に対する影響を検討したものはありませんでした。
この研究を見る限りにおいては、弓状子宮が着床・妊娠に悪影響を及ぼすことはないと考えられますが、
アメリカ(ASRM)と欧州(ESHRE)では若干診察基準が異なりますので、今後さらなる研究が求められます。
また、子宮奇形のすべてが着床不全に影響しないわけではありません。
あくまでも弓状子宮と着床の関係性に関する内容であることをご理解ください。