当院では、原則として、
①最適な卵巣刺激を行い、より多くの受精卵を得る
②全例タイムラプスによる培養を行う
③移植は凍結融解胚移植
というのが、標準的な体外受精のプロトコルとなっています。
今回は③の、凍結融解胚移植における最新のデータを紹介させていただきます。
世界も凍結融解胚移植を標準化してきている
凍結融解胚移植が日本において主流となってきた背景にはいくつかの流れがあります。
以下の記事でも紹介していますが、日本では徹底した単一胚移植、つまり多胎妊娠の予防がなされています。
そのため、複数の胚盤胞が得られた時、どうしても凍結しておく必要がありました。
そのため、ガラス化凍結法という技術が開発され、飛躍的に凍結技術が向上しました。
これは日本が世界に先駆けて導入してきた技術です。
また、実際に同じ方法といっても、これは日本のクリニック間でもかなり開きがあるといわれますが、
凍結した胚を融解した時の生存率は95%を超えています。
凍結融解胚移植の詳細については、以下でも紹介しています。
簡単にここでもまとめると、
1、採卵をした周期では、ホルモンバランスが乱れており着床に適さない
2、子宮外妊娠のリスクが少ない
3、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクが少ない
などが挙げられます。
さて、今回はアメリカでの大規模な研究で、新鮮胚移植と凍結融解胚移植の成績を比較した論文を紹介します。
Randal D. Robinson, M.D et al.,
Fertil Steril July 1, 2018Volume 110, Issue 1, Pages 59–60
この研究はアメリカで行われたものでおよそ236,000周期の胚移植周期を比較しています。
その半数は新鮮胚移植、半数は凍結融解胚移植であり、妊娠予後について比較検討を行いました。
この結果によると、
出生率はFETの方が49%高く
流産する確率は、FETの方が7%低く
一方で早産する確率は16%FETの方が高くなりました。
総合的に考えたときには、やはり世界水準で標準的な移植方法は凍結融解胚移植と考えられるでしょう。
ただ、上述したようにあくまでもセオリーです。
人によっては、新鮮胚移植が適している場合もありますし、
反復して不成功となる場合には、子宮内膜のホルモンバランスだけではなく、
子宮内膜炎や子宮内のフローラ、着床の時期のずれが考えられます。
以下から、当院の検査も確認いただけます。