卵子の質の低下の原因には、年齢や酸化ストレスなどがあります。
この酸化ストレスは、肉体的・身体的ストレス、食べ物、
過度な運動により発生した活性酸素の分解処理が追い付かずに、
体内に蓄積することが原因とされています。
活性酸素についてはこれまで以下のような内容も紹介していますので、
参考にしてみてください。
メラトニンとレスベラトロールの不妊治療への効果
睡眠ホルモンといわれるメラトニンには、酸化ストレスを軽減させる抗酸化作用があるといわれています。
過去の紹介は以下から確認いただけます。
例えば、排卵の際にも卵子は酸化ストレスの影響を受けるといわれていますが、卵胞液中に多く含まれているメラトニンにより、酸化ストレスから卵子を守ると言われています。
Melatonin and the circadian system:contributions to successful female reproduction
Russel J. Reiter, et. al.
Fertility and Sterility Vol. 102, No. 2, 321-328, 2014
また卵子の中にはミトコンドリアと呼ばれる細胞が含まれており、卵子の成熟や初期胚の発生に関与していると言われています。
このミトコンドリアは加齢とともに数が減少すると言われています。
ミトコンドリアが増加したり、活性化することにより、卵子の質が改善されるという報告があります。
ウシの報告になりますが、レスベラトロールを添加した培養液で、未熟な卵子を培養すると、卵子の成熟率の上昇やミトコンドリア数が増加することが報告されています。
Resveratrol improves the mitochondrial function and fertilization outcome of bovine oocytes
Shun Takeo, et. al
Journal of Reproduction and Development, Vol. 60, No2, 92-99, 2014
さらに卵子の中にはサーチュイン1(SIRT1)という遺伝子があり、これは若返り遺伝子ともいわれています。
この遺伝子が活性化されることで、ミトコンドリアの生成が促進され、結果的に卵子の質の改善につながると言われています。
Beneficial effect of resveratrol on bovine oocyte maturation and subsequent embryonic development after in vitro fertilization
Feng Wang, et. al
Fertility and Sterility Vol. 101, No. 2, 577-586, 2014
当院においても、卵巣刺激に合わせて、メラトニンやレスベラトロールを処方しています。
実際にメラトニンまたはレスベラトロールを内服した周期と内服していない周期(コントロール)の培養成績を比較した当院のデータを示します。
グラフからもわかるように、メラトニンやレスベラトロールを内服することで、
胚盤胞到達率や、良好な胚盤胞が得られる割合が高くなっていることがわかります。
また、内服することで妊娠率の上昇や、流産率の低下傾向がみられています。
ただしレスベラトロールには、子宮内膜において、着床に必要な脱落膜化を阻害する働きがあるという報告があります。
そのため、当院においては、特にレスベラトロールは採卵前日までの処方となっております。
メラトニンやレスベラトロールは、市販で販売されているサプリメントですが、
もしご自身で購入し内服される場合は、内服量や内服期間について、一度医師にご相談ください。