乳がん治療患者が妊娠を希望してもすぐに妊娠を許可することはできないことが多いです。
それは、治療の特性上、催奇形性など薬物治療や放射線治療による安全性の点で問題があるからです。
ケース別による妊娠を開始するまでの休薬期間について紹介します。
乳がん治療患者はいつから妊娠してもよいか?
乳がんの標準治療であるホルモン療法(タモキシフェン内服)、化学療法、抗HER2治療(トラスツマブ)、放射線治療別に紹介します。
ホルモン療法
タモキシフェン内服中の妊娠は胎児に対する催奇形性のリスクがあり、禁忌とされています。
タモキシフェンの代謝産物が体内から消失するには内服終了後2か月かかるとされているため、
タモキシフェン内服終了後2カ月間は避妊期間を置くべきです。
化学療法
抗ガン薬の場合は、原子卵胞が排卵に至るまでの期間を勘案して4-6週間の期間を開けるのが望ましいとされています。
シクロフォスファミド投与後排卵までの期間が9週以内の場合には、先手異常を認める可能性が高くなるという報告もされていますが、
12週以降では低下するため、使用薬剤ごとに休薬期間は異なる可能性があります。
悪影響は必ずしも明らかではありませんが、現時点では、投薬終了後6か月は妊娠までの期間を開けるべきと考えられています。
抗HER2療法(トラスツマブ)
トラスツマブのヒトの体内における半減期間は16日程度であると考えられています。
ハーセプチンの添付文書には7か月間は妊娠を控えるよう記載されており、
臨床データの統合はまだ始まったばかりであるため、現時点ではこの規定を守るべきであると考えられます。
放射線療法
放射線治療後は、乳がんの再発リスクやほかの補助療法の必要性を考慮したうえで、
特別なWash out期間を設けることなく妊娠を検討してもよいと考えられています。
乳房温存術を受けた後に照射を受けた患者においては、対側の乳房からは安全に授乳できることが確認されているほか、
授乳自体が乳がんの再発リスクを高めることや、児への影響はないと現時点では考えられています。
現時点ではこのようなガイドラインが定まっていますが、
がん治療については、ヒトゲノム研究と相まって、さらに加速度的な治療方法が開発されています。
常に最新の情報にUPDATEする必要があるといえます。